ビジターズ・アロハ・ソサエティ・オブ・ハワイ(VASH)
ジェシカ・リッチ代表
VASH(ヴァッシュ)とは
犯罪や災難に見舞われた観光客に対して、アロハスピリットを持って事後処理を手伝い、ハワイでの滞在が良い想い出となるようサポートする非営利団体。往復航空券を持ち、ハワイ滞在60日以下の観光客が対象。本人が家族や友人に連絡できるようになるまでの間サポートをし、一時的なライフラインの役割を果たす。
編集長:VASH(ヴァッシュと発音)の活動の内容を教えてください。
リッチ:ハワイに来られたツーリストの皆さんが、犯罪や事故などに巻き込まれたり、病気で緊急の事態に陥った時などに支援をすることが直接の活動内容です。ほとんどの方が身寄りや生活の拠点もない中で、言葉が分からない、あるいは言葉は分かっても、対処の仕方が分からないなど、途方に暮れる事態がたくさんあるのです。そんな時に、手をさしのべて実務や精神的なアシスタントなどをしています。
編集長:具体的にはどんな形で支援要請があるのでしょうか?
リッチ:警察や病院を通じて連絡が来ることが最も多いですね。犯罪の被害者になった場合は、皆さん警察に届け出をされます。言葉が分からない、貴重品が盗まれて、その後の滞在に支障が出たりした場合に、警察から私たちに連絡が来ることになっています。
編集長:連係プレイなのですね。
リッチ:はい、病院も同様です。事故や病気にあわれた当事者だけではなく、気が動転して不安でいっぱいのご家族や友人グループのケアも私たちの重要な役割です。
編集長:被害に合われた本人だけではなく、一緒にご旅行に来られた方々まで含めてのサポートをされるのですか。
リッチ:ええ、例えば付き添いの方が病院を離れられずにいるときにホテルに着替えを取りに行って届けたり、行方が分からない方や病院で治療を受けている方などを待つ間に、一緒にいて励まして
あげたり。
編集長:ハワイの場合、主な被害というと、どういったものがありますか?
リッチ:ビーチやショッピング先などでの盗難や車上荒らしが4割近くになりますね。その次に病気や事故による死亡、緊急医療などです。2007年にVASHが援助した件数は1180件、人数は約2900人、その内106人が日本からの方でした。
編集長:日本の方の場合も被害内容は同じですか?
リッチ:そうですね。日本の方は、母国の治安状態がとても良いために、常に多額の現金を持ち歩いたり、ビーチに置いたままにして海の中で長時間遊んでしまったりされるようです。レンタカーのトランクや見えるところに貴重品を置いたまま買い物を楽しんだり。
編集長:皆さん、やはり楽園に来て、瞬間、瞬間を精一杯楽しもうとされているので、ただでさえ安全面への注意力が散漫になっていくとは思います。
リッチ:まずは貴重品はホテルのセイフティ・ボックスに入れ、多額の現金は決して持ち歩かない、トランクにスーツケースなどを入れたまま長時間放置しないなど、隙を作らないことが大事ですね。ハワイは世界で最も安全な観光リゾートのひとつとして評価されていますが、盗難などがまったくないということではありませんので、ぜひご注意いただきたいですね。
編集長:VASHの存在意義として、精神的なサポートというのはとても大きいですね。
リッチ:実際、VASHは現金や貴重品の補償ができるわけではありません。被害を軽減するためのお手伝いやアドバイスはできるのですが、最も大切なのは、被害者の方に、身寄りのない土地で親身になって手助けをしてくれる存在があると感じていただけることだと思っています。
編集長:どこの国の観光客であろうと必要な精神的サポートですね。
リッチ:皆、思いがけない事態に気持ちが動転してしまわれるので、知らない土地で孤独に感じないよう、少しでも一緒にいて話し相手になるだけでも安心されます。ハワイでマイナスの体験をしてしまった方に精一杯の手助けを提供することでアロハ・スピリッツを感じていただき、ハワイ旅行がすばらしい思い出として残ることがVASHの究極の目的なのです。
編集長:80名ものボランティアで成り立っている組織だそうですが。
リッチ:はい。きちんとした面接で選ばれ、適切なトレーニングを受けた優秀なボランティアばかりです。その内、15人が日本語を理解するメンバーになります。警察や病院、観光産業の方々との間に立ってコーディネーションを行うので、たいへんな仕事です。夜間の出動もありますし、難しいケースも多いので、彼らの献身的な活動には感謝の気持ちでいっぱいです。
編集長:難しくてたいへんな分、報いも大きいですよね。
リッチ:本当ですね。問題が解決した時に、心からの笑みを浮かべて感謝してくださったり、ハワイに対してとても良いイメージを持ってお帰りいただけることが分かった瞬間が、私たちの最高の喜びです。以前、水の事故で長期に渡ってハワイで療養しなくてはいけなかった若い男性がいらっしゃいました。たまたま独立記念日になり、ホテルの協力のもと、目の前にアラモアナの花火大会が見えるお部屋を提供したところ、「人生で最高の思い出になった! 」と心から喜んでいただきました。このように、最悪の記憶になりうることを、感激の体験に変えていくことが私たちの使命なのです。
編集長:旅の体験は皆さん、ホームタウンに戻ったときに共有しますからね。
リッチ:ハワイは本当にすばらしいパラダイスですから、その姿を本来の意味で語っていただきたいですよね。不運なできごとにもかかわらず、また来たいと思い出話を語ってくださる方の存在は、とても貴重なのです。
編集長:私たちも遅ればせながら、今年から組織に参画させていただきました。
リッチ:副会長の広告代理店ナシモト&アソシエイツが長いこと唯一の日本人理事として活躍してくださっていますが、VASHの存在をもっと日本の皆さんに知っていただきたいので、ぜひご協力をお願いします。最近では自分でチケットやホテルを手配して、個人で来られる日本の方が増えていますので、私たちのサービスを知っていただだくことで、より安心してハワイ旅行をお楽しみいただけると思います。
インタビューを終えて
元々ハワイではラジオのDJとして「ジェシカズ・ジャーナル」という番組を担当されていたリッチさん。人助けに関心を寄せ、
専門的なトレーニングも受けたことがあるそうです。昼も夜もなく、旅人の思い出づくりに貢献する彼女の遠心力は、たくさんの要職につく方々を引き寄せて、VASHをさらに強力な団体へと成長させています。
【VASHの主なサポート例】
電話のプリペイドカード、食事や衣服、商品券、地上交通手段 、エンターテインメント 、ハワイのギフト(菓子類)、花やギフトバスケット、レンタカー割引、帰国便変更、宿泊施設手配のサポート、VASHができるサポートについて説明する際の通訳、葬儀手配のサポート、付き添いや精神的なサポートなど。
VASHオフィス:ワイキキ・ショッピング・プラザ4F (403-3号室)
詳細はウエブサイトを参照。
※アロハストリート2008~2009冬号に掲載した記事です。
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