NPOとして90年にわたり
ハワイのコミュニティをサポート
全米巨大NPO、ユナイテッド・ウェイのオアフ島支部として、90年という長い歴史を持ち、ハワイに暮らす人たちの突然の失業や病、子どもの早期教育、ホームレス問題など、さまざまな社会のニーズに救いの手を差し伸べている「アロハ・ユナイテッド・ウェイ(AUW)」。ハワイのコミュニティを根底で支える団体AUWの副社長ディー・ケイ・オカハラさんに、詳しい活動内容についてお話を聞いた。
Dee K. Okahara / ディー・ケイ・オカハラ アロハ・ユナイテッド・ウェイ(AUW)のキャンペーン部門副社長。インターンとしてマーケティング部門で働き始めたのがAUWとの出会い。その後3 年間働き、5 年後に再びAUWへ。現在はバイス・プレジデントとして、さまざまな仕事をこなしながら、新たな活動にもチャレンジしようとしている。 |
編集長:アロハ・ユナイテッド・ウェイ(AUW)は、1919年にスタートということで、すでに90年も活動をしていらっしゃるんですね。長くて驚きました。現在は何人ぐらいの方が働いているのでしょう?
オカハラ:現在は、40人以上が3つのフロアに分かれて仕事をしています。
編集長:わぁ、かなり大きな組織なのですね。
オカハラ:最初は17のエージェントと20万ドルの規模から始まり、今では96ものパートナー・エージェントと1000万ドル以上(約10億円)を集める、ハワイでも最大規模のNPOとなり、ハワイの地域発展のために全力を尽くしています。
編集長:AUWの主な活動内容を教えていただけますか?
オカハラ:基本的には基金活動を行って、集まった資金をエージェントとして参画している企業と分配を決めます。集められた大切な寄付金を、困っている人たちのために正しく使われるように分配することを心がけています。
編集長:寄付金集めというのは、そう簡単なことではありませんよね。今のハワイには、いったいどんなニーズがあるのでしょう?
オカハラ:私たちAUWが注力しているニーズの最も高い分野が「子どもの早期教育」、「緊急・危機対策」、「財政安定&独立補助」、「ホームレス対策」、そして「犯罪と麻薬対策」の5つです。
編集長:なるほど。どれも必要な分野と言えますね。こういったニーズは、社会の移り変わりを反映して、時代とともに変わっているのでしょうか?
オカハラ:そうですね。やはり昨年は、経済不況のあおりを受けて、「財政安定&独立補助」へのリクエストが増えましたね。
編集長:ハワイ在住なら、誰でもAUWのヘルプを受けることができるのでしょうか?
オカハラ:はい。私たちのサポートが必要と思われる時には、緊急事態の場合に「911」(日本の110 番)に電話するように、「211」に電話をいただければ、まずは問題を聞いて正しく状況を判断し、問題解決に最適なコミュニティ・サービスを紹介します。今では、介護の悩みやチャイルドケア、家庭内暴力など、生活の基本となる問題にまで相談に乗っています。
編集長:頼りになる存在ですね。
オカハラ:「211」は英語が話せない方への対応も行っていますので、何か問題があったら、遠慮せず、ぜひ連絡をしてほしいですね。
編集長:違った意味で、ボランティアなども紹介してくださるのでしょうか?
オカハラ:ええ、ボランティアが必要な団体の情報をウエブサイトに掲載して、ボランティアをしたい人とのマッチング作業も行っています。ボランティアを希望する人はたくさんいるので、サポートの必要なNPO(非営利団体)が、滞りなく活動を行えるように手助けするのも、私たちが果たすべき役割のひとつだと思っています。
編集長:なるほど。助け合うことで、生活の中に大きな輪が広がる感じがします。こういう困難な時だからこそ、そういった思いやりがより必要だと思います。そういえば、ハワイには元々「コクア」(協力)というすてきな言葉もありますよね。
オカハラ:はい。私もいい言葉だと思います。ハワイでは人々が互いに気遣い、助け合い、与え合って暮らしています。ここに暮らす人たちは、とても大らかで優しく、とくに困難な時には人を助けるために積極的に手を差し伸べようとするところがあって、いつも感動します。
編集長:ハワイは人の優しさや愛情を肌で感じる、すばらしい場所だと思います。だからこそ、世界中から人々が集まってくるのではないでしょうか。
オカハラ:たくさんの国からさまざまなバックグラウンドを持った人が集まって、共に暮らすハワイだからこそ、人を思いやるコクアの精神は不可欠なんですね。アロハスピリッツの存在もとても大きいと思います。それを旅行で訪れた方も感じていただければうれしいですよね。
編集長:寄付金集めには、ハワイ在住の日本の企業もたくさん協力しているのですか?
オカハラ:「日本クラブ」という日系企業の団体が、2009年8月にワイキキビーチの清掃を行い、基金活動をしてくれました。ハワイに暮らす日本の方々が100名以上も参加してくださったんですよ。上野編集長もメンバーのおひとりですよね?
編集長:はい。アロハストリートからも私と編集スタッフが参加して、ウエブサイトにレポートを掲載いたしました。
オカハラ:ありがとうございます! それはうれしいですね。さまざまな機会を通して、たくさんの方に私たちの活動を理解してもらい、より多くの人がサポートを受けられるようになることが、私たちAUWの何よりの願いです。
編集長:先ほどの5つの問題のほかにも、今後より力を入れていきたい分野などはありますか?
オカハラ:家庭に問題があったり、ドラッグなどに関わり、通常の環境で教育を受けられなかった子どもたちに、教育の機会を与えるプログラムを充実させていきたいですね。ハワイでは、子どものいる家庭のホームレスが、この1年で3倍にも増えているのです。経済を反映しているとは思うのですが、今はこの問題に取り組むことが急務と考えています。
編集長:子どものホームレス、しかも1年で3倍という数字はショッキングですね。
オカハラ:日本ではあまり聞かない話かもしれませんが、ハワイでは確実に増加傾向にあります。
編集長:それはぜひとも今後の課題として取り組んでほしいですね。AUWは大きな団体なので、企業からの寄付金が主なのでしょうか?
オカハラ:いえいえ。実は75%が個人からの寄付金なんですよ。本当にたくさんの方から寄付をいただいて、毎年トータルで1000万ドル以上になっているのです。これはすごいことですよね。
編集長:お話を聞き、AUWがハワイのコミュニティに信頼され、大きな役割を果たしていることを改めて実感しました。最後に、オカハラさんのこの仕事に対する思いを聞かせてください。
オカハラ:困難に直面している人たちに対し、私たちのプログラムが支援の役割を果たせたと感じることができるのは、とてもうれしいことですし、やりがいを感じることができます。今後もコミュニティサポートのために、最大の努力を続けて生きたいですね。
編集長:AUWは次の90年も、きっとハワイを支えていく存在であり続けることでしょう。ありがとうございました。
インタビューを終えて AUWへの寄付について
ワイキキビーチ・クリーンナップ 子どもからシニアまで、日本クラブの呼びかけで100名以上が集まり、ボランティアで早朝のビーチでゴミ拾をしました。次回はぜひ参加しませんか? |
※「編集部インタビュー」では、ハワイの多分野で活躍される方にお話を伺っていきます。バックナンバーはこちら。
※アロハストリート2009-10冬号に掲載した記事です。
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