ハワイ初のマスター・ソムリエとして
食のムーブメントをプロデュース
ワインをこよなく愛し、ハワイで最初にマスター・ソムリエの資格を得たチャック・フルヤさん。ハワイにはふたりしかいないソムリエの最高峰として、そしてレストラン経営者として多忙な毎日を送っているチャックさんに、愛するワインへのこだわりなどについてお話をお伺いしました。
Chuck Furuya/チャック・フルヤ ハワイで最も有名なワインの達人。1988年、アメリカで10番目のマスター・ソムリエとなる。ハイアット・リージェンシーのBagwell's 2424をはじめ、ハレクラニ、ワイキキパークホテル、旧カハラ・ヒルトンなどの有名レストランを経て、2003年にマウイ島、2004年にレストラン・ロウに「VINO Italian Taoas & Wine Bar」をオープン。現在はビジネスパートナーのDKコダマ氏経営のレストランでもワインのコンサルティングを行っている。 |
編集長:
ワイン好きとして、ずっとお会いするのを楽しみにしていました。マスター・ソムリエというのは、ソムリエの最高峰ですが、どのようなきっかけでワインに興味を持たれたのでしょう?
フルヤ:
学生時代に有名ホテルのレストランでウェイターとして働いているときに、お客様に何を聞かれても困らないように、メニューや飲み物など、レストランに関するあらゆる知識が必要だったんですね。でもワインに関しては、自分の
質問に答えられる人が誰もいなかった。だから自分で勉強を始めたんです。そうしたらどんどん面白くなっていったんです。
編集長:
それは驚きです!
フルヤ:
三十数年来の親友がサンフランシスコにいるのですが、彼もワインが大好きで、毎日のようにワインの話をしていたんです。今でも週に5~6回は電話で話しているんですが(笑)、彼はアメリカで8 人目のマスター・ソムリエになりました。僕は10 番目です。
編集長:
マスター・ソムリエの試験はむずかしいのでしょうね。
フルヤ:
ソムリエは誰でもなれるのですが、マスター・ソムリエはふたつの試験に合格する必要があります。1985 年まではイギリスでしか受験することができなかったのですが、1986 年になって初めてカリフォルニアで行われ、16 人のアメリカ人が招待を受けて受験しました。私もその中のひとりでした。
編集長:
受験も選ばれし者しかできない難関ということですね。なぜチャックさんは選ばれることになったのでしょう?
フルヤ:
当時は、すでにハイアット・リージェンシーのレストランで働いていて、知識もそれなりにあったし、アメリカのワイン・コミュニティは小さくて、誰もがみんなを知っている状況ですから、評判はたちどころに広まります。誰かが受験に値する、と思ってくれたのでしょうね。
編集長:
なんだかワクワクするお話ですね。マスター・ソムリエは、今ハワイにはふたりとか?
フルヤ:
私ともうひとり、若手のソムリエがいます。ワインの世界にも若い人がどんどん育ってくるのはうれしいことです。教えることも私の仕事のひとつと思っているので、今後は若手の育成にも、もっと力を入れていきたいですね。
編集長:
なるほど。ワインは奥が深いので、どんなに勉強しても終わりがないですね。
フルヤ:
おっしゃるとおり、ワインは奥が深くて、その向こうにさまざまなストーリーがあります。今まで世界中のトップレベルのワイナリーを訪ねて行きましたが、何代も続くワイン農家で作られるワインは、実はごつごつした岩場にぶどうが生えていたりするものです。(席を立って別室に飾ってあるフランスのワイン農家の写真を見せながら)時として派手なワイナリーが注目されることが多いけれど、代々土地を守り、自然と闘い、共存しながらこだわりのワインを創り上げていく農家の職人魂は感動もの。アートと言ってもいいくらい。そこの代表者と握手すると、手の分厚さ、握力の強さに驚きます。ちゃんと土をいじっている手。それがいいワインを作り出すんですよ。だから値段が高いのは当然で、決して気取っているわけじゃないんです。
編集長:
わぁ、こんなところでもブドウが育つんですねぇ。ワインに対する考え方や思いも変わってきますね。
フルヤ:
そうでしょ? ワインにふさわしいブドウ作りは過酷な仕事なんです。忍耐も必要だし。
編集長:
すごい! 味だけじゃなくて、その奥にあるワイン作りの話が知りたくなってきました。
フルヤ:
それだけのワインの味を大切にするには、気をつけるべき大事なことがふたつあります。それは酸化を防ぐことと温度調整。ボトルは1 度開けてしまうと酸化が始まるので、それを防ぐために私のレストランでは、オリジナルの酸化防止装置を用意しています。これにキープしておくと、開けた後も3 週間は大丈夫。あとは温度ですが、温度調整にこだわらない会社が運ぶと、ワインの味が台無しになってしまうこともあるので、きちんとしたワイン会社を選ばないと。これまたコストは高くつくけれど、意味のあることなので、ここにも注意を怠りません。
編集長:
ワインは「生きている」のですね。
ホテルで開催される食のイベントなどで、ワインについて語る機会も多い。
フルヤ:
まさに。だから、グラスにも細心の注意を払うことが大切。ワインは汚れを嫌うので、ワイングラスだけを洗うウォッシャーを別に用意しています。ほかのお皿とは一緒に洗わないから、食べ物のにおいや汚れ、オイルなどがつく心配もない。さらに臭いの残る洗剤も使わず、水に含まれるカルキ臭も防ぐために、フィルターで漉した高温水だけで洗浄しているんですよ。
編集長:
なるほど! だからグラスはどれもピカピカなんですね。そういったこだわりがあるからこそ、チャックさんのレストランで飲むワインはさらに美味しく感じるのでしょうね。
フルヤ:
ありがとうございます。今、ビジネスパートナーとともに4 軒のレストランの運営に関わっていますが、どのレストランでもベストなワインを出せるように気を配っています。
編集長:
チャックさんはハワイ・リージョナル・キュイジーヌの有名シェフたちとも交流があるのですよね?
フルヤ:
ええ。オバマ大統領もお気に入りのアラン・ウォンを筆頭に、彼らの料理に合うワインをセレクトしたり、アドバイスを行ったりしています。ベースとなる料理によってキーとなる調味料も違ってくるので、マッチするワインも当然違う。味の融合により、料理も奥が深くて難しいけれど、彼らの好みを分析しながら選ぶのは楽しいですよ。
編集長:
マスター・ソムリエはお忙しいですね(笑)。最後に、日本人でもカリフォルニア・ワインを上手に選ぶヒントや、ハワイならではの料理に合う美味しいワインの見つけ方など、何かアドバイスがあれば教えてください。
フルヤ:
やっぱりおすすめのワインはソムリエかシェフに聞くのが1 番ですね。私たちの仕事はゲストの好みを聞き出し、正しいワインを選び出すこと。だから、私も毎日店に出て、何が飲みたいのかをストレートに聞きます。その日の気分を聞き出して、ベストなワインをチョイスしますよ。
編集長:
ぜひフルヤさんのチョイスで、ワインの奥深さを堪能したいと思います。ありがとうございました。
インタビューを終えて |
全米でも高い評価を受けている
マスター・ソムリエの店
2006年に「America's 50 MostAmazing Wine Experiences」のひとつに選ばれたヴィーノ・イタリアン・タパス&ワイン・バー。
VINO Italian Tapas & Wine Bar
住所 500 Ala Moana Blvd(レストラン・ロウ内)
電話 808-524-8466
営業時間 17:30~21:30(水、木曜)、17:30~22:30(金、土曜)日~火曜定休
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