ハワイの愛を歌う4冠受賞の大型新人

ハワイの愛を歌う4冠受賞の大型新人

ハワイ最大の音楽の祭典、ナ・ホク・ハノハノ賞にて4部門を受賞したマーク・ヤマナカさんに直撃インタビュー!

公開日:2011.09.16

更新日:2017.06.14

アロハストリート・インタビュー

 デビューアルバム「レイ・プア・ケニケニ」が、ハワイ最大の音楽の祭典、ナ・ホク・ハノハノ賞2011にて4部門を受賞し、一躍話題のアーティストとなった大型新人、マーク・ヤマナカさん。受賞についての心境や、音楽活動の原点、そして注目される今後についてお聞きしました。

 

Mark Yamanaka
マーク・ヤマナカ

ハワイ島ヒロ出身。13歳からウクレレを始め、クムフラ、ジョニー・ラム・ホーに才能を見出され、師事。クムやハワイアングループ「ナ・パラパライ」のバックバンド活動を経て、2010年ファーストアルバム「レイ・プア・ケニケニ」リリース。ハワイのグラミー賞といわれるナ・ホク・ハノハノ賞にて最優秀新人賞など4部門受賞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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編集部:ナ・ホク4冠受賞、おめでとうございます!ファーストアルバムにもかかわらず、「最優秀新人賞」「最優秀男性ボーカリスト賞」「最優秀アルバム賞」「最優秀楽曲賞」の4冠受賞。「彗星のごとく現れる」とはまさにこのことですね。

マーク:いやぁ、今だに受賞が信じられないぐらいです。なにせ、まったく期待していなかったし、受賞パーティでは「楽しい時間を過ごせればいいな」としか考えていなかったから、ステージで自分の名前が呼ばれたときは本当に驚きました。むしろショックだったと言っていいほどですよ。

編集部:ノミネートも入れれば全部で7部門。本当にすばらしいですね。受賞後、まわりの状況に何か変化はありましたか?

マーク:とくに大きな変化はない…というか、僕自身は平常心をキープするようにしています。まわりが変化するということは、自分自身が変わったということだと思うから。でも、注目される度合いは、前よりも確実に上がったと実感しますね。こうして取材を受けたり、街中で声をかけられるようになったり…なんだかヘンな気分だけど(笑)。それだけ多くの人がハワイアン・ミュージックやナ・ホクに関心を持っているという証拠でもあるので、うれしいことですよね。

編集部:ナ・ホクの授賞式のあと、日本ではマークさんのアルバム「レイ・プア・ケニケニ」が売り切れるお店も多かったと聞きましたよ。

マーク:日本の友だちからも聞きましたが、うれしいですよね! 売れたことじゃなくて、自分の音楽が広がっていくことが。感無量です。

編集部:CDを聴いてまず驚くのが、類まれなる歌声。まるで少女のような高音のファルセットから、ゆったりと体の中心に響くようなバリトンまで、この七色の声はどうやって生まれたのですか?

マーク:僕はハワイ島ヒロで育ち、クム・フラでありミュージシャンのアンクル・ジョニー・ラム・ホーのもとで修行を積みました。この歌唱法はアンクルのスタイルのひとつ。クワナ・トーレスをはじめ彼のまわりにいるアーティストは、すばらしい声と歌唱法の持ち主ばかり。僕もその点にはとても誇りを持っているんですよ。あと、子どもの頃からギャリー・ハレアマウやデニス・パヴァオなど、多彩な歌唱法を持つハワイアン・アーティストをコピーしていたことも大きいかな。でも音楽的なことを差し引いて言うと、この声は……ちょっと恥ずかしいって思うときもありますよ。「まさか大の男が歌っているとは!」と、みんなに驚かれるので。

編集部:そのギャップが魅力ですよね。また曲調も、正統派ハワイアンもあれば、メローなアコースティックもあったりと、バラエティ豊かですね。まるでショーケースのようで。

マーク:これまでアンクルや、クアナのいるナ・パラパライをはじめ、いろいろなアーティストと音楽活動をしてきて、ようやく自分のソロを出す機会に恵まれたので、自分ができることを全部盛り込みたかったんです。ヒロで育った僕の原点である、ハワイアンの楽曲が持つすばらしさや奥深さ、技術的な部分も見せたかったし、多くのアーティストからの影響を受けて自分が磨いてきたものもすべてね。あとは…ソロアルバムを出すって、じつは少し怖いことでもあるんだよね。自分の音楽性の中で、どんなものが好かれるのか、人々が求めるものを見極めるのは難しい……やっぱり多くの人に喜んでほしい、じゃあいろんな曲を詰め込もう、と。

編集部:アルバムを通して、家族やふるさと、そしてハワイへの愛情に溢れた1枚になっていますね。

マーク:このハワイに生まれ、ヒロに育ち、アンクルはじめ多くのミュージシャンの中で影響を受けて今の僕があります。ふるさとや人々への愛情を歌うことは、とても自然なことなんですよ。とくに家族は、すべてのパワーの源。どんな時でも僕を前へ進ませてくれるのは、家族の存在があるから。

    
編集部:最優秀楽曲賞に輝いた「カレオオナラニ」は、ご自身の娘さんを思う気持ちが切ないほど伝わってきます。

マーク:これは2009年に作った曲なんだけど、じつは10分ぐらいでスラスラーっとできたんですよ。

編集部:え、たった10分で!?

マーク:はい。しかも書いた後、本棚にしまってほとんど演奏しなかったんだよね。でも僕が家族のように慕っているアンティ(おばさん)の「ぜひこの曲を入れるべきよ」という言葉に促されてCDに収録したら、とても好評で。しかも受賞までしたものだから、さらに驚いたんだけど(笑)。正直なところ、この曲はハワイアンっぽくないので、CDの収録には不安なところもあったんだけど、入れてよかったですね。この曲を書いたとき、「さあ曲を作るぞ」というのではなく、愛する家族に語りかけるように、内側からするするっと自然に出てきたんです。曲名のカレオオナラニは僕の娘の名前だけど、娘だけではなく、息子への愛情もそこには入っていて。もっと言うと、子を持つ親、そして愛する人を持つすべての人の歌だと思っているんですよね。

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編集部:お子さんといえば、ナ・ホクの授賞式に2人とも来ていましたね。舞台に上がって誇らしげにトロフィーを抱える姿がかわいくて。

マーク:僕よりも子どもたちのほうがライトの下に出ることに慣れていたよね。僕はシャイで、人前に出ることが苦手なんですよ。アンクル・ジョニーもシャイな人なので、似てしまったのかな。でもナ・ホク受賞は、そんな僕の“殻”を壊してくれたような気がする。多くの人が僕の楽曲を評価し、リスペクトしてくれたことは、確実に自分の中で自信につながっていて。だから人前でも怖気づかないでいられるんだと思う。そもそも、賞を取るために音楽をやっているんじゃないし、お金儲けのためでもなくて、ただ音楽が好きで好きで、楽しくてしょうがないだけなんですよ。そういう意味でいうと、演奏してお金をもらうことがプロだとしたら、僕はプロになりたいと決意したことは一度もないんだよね。音楽のすばらしさの中に身を置いて、みんなが幸せな気分になってくれたらうれしい、ただそれだけ。でも、ナ・ホクは僕にたくさんの自信をくれたよ。

 

編集部:多くの音楽ファンが今後の活躍に注目していますが、次のステップは?

マーク:じつは、次のアルバムの準備をスタートしたところなんですよ。「レイ・プア・ケニケニ」ではハワイアンが中心だったので、次はもっとコンテンポラリーなものに挑戦してみたいなというアイデアがあります。個人的にはメローな曲も好きなので、カレオオナラニのようなナンバーも増やしていきたいな、と。また歌うだけじゃなくて、ギターなどの演奏も自分でやりたいと思っているんですよ。大きなバンドではなく、バックは2~3人の演奏だけにして、あとは全部自分でやるといった具合に、次のCDはもっと「僕」なアルバムにしたいんだよね。もちろん、まだ構想段階なので、実際どうなるかはわからないけれど。それにまだデビューCDも出たばかりなので、まずはこのCD中の曲を演奏して、より多くの人に聴いてもらうことに集中していくつもり。

編集部:去年の春にはまだレコーディング中だったというから、激動の1年ですよね。

マーク:本当にね。今後はハワイ島ヒロだけでなく、オアフ島や日本にも行くチャンスが増えそうなので、ワクワクしています。僕は日系4世で、日本にもオハナ(家族)がたくさんいるし、大好きな場所。日本のみなさんと一緒に、僕の音楽を通していい時間をシェアしていきたいですね。

編集部:今日はありがとうございました!

 

 

 

インタビューを終えて
「取材はまだ慣れない」とはにかみながらも、音楽の話になると真剣なまなざしで語る姿が印象的なマークさん。厳しく音楽を追求するアーティストの中に、家族との時間がなにより大切だという父親の顔を覗かせてくれました。その両面が、マークさんの楽曲の奥深さと感動を生み出すのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

マーク・ヤマナカ
「レイ・プア・ケニケニ」

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ナ・ホク・ハノハノ賞で4部門を受賞したマーク・ヤマナカのデビューアルバム。正統派ハワイアンを中心に、アコースティックなサウンドやバラード、ゴスペルなどさまざまな音楽性を含んだ1枚。クムフラのジョニー・ラム・ホーやクワナ・トーレスをはじめ、マークさんがリスペクトするミュージシャンが多数参加した豪華な内容となっています。

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