※この記事は2018年3月12日に公開されたものです。
アロハ! メグミです。
先日、とあるペットアイテム専門店のオーナーさんにお話を聞く機会があったのですが、お店をオープンしたきっかけについて質問すると、「もどかしかったから」という答えが。
「その頃のペットビジネスのあり方には、不満だらけでした。良質なペットフードのために、オアフ島中のペットショップをあれこれ探し回るのに疲れたんです」
そう語ってくれたのは、アーリ(Alli)さんという方。
カパフル通りとカイルアにあるペットアイテム専門店「カルビン&スージー」を経営しています。
ペットも大切な家族の一員だという思いは、いまや当然となっていますよね。いつも元気でいてほしい、大切な時間をたくさん共有して、少しでも長生きしてほしい…と。
でも、じゃあ本当にペットのことを考えているかというと、じつは知識不足なことも多いのかもしれません。
たとえば、食事のこと。
今回、アーリさんにお話を聞いて、いろいろと考えさせられる点がたくさんありました。犬や猫がおうちにいる方、ハワイに住んでいる方はもちろん、日本にいる方にも、ぜひ知っていただきたい内容です。
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アーリさんがペットアイテム専門店「カルビン&スージー」をオープンしたのは2010年。その頃は、オアフ島のペットショップにも良質なペットフードがないわけではないけれど、探すのはとても困難で、やっと見つけても、次にそのお店に行くともう売っていない…という状態。また多くのペットショップで生体販売を行っていたことも、アーリさんにとってはつらい現実でした。
「私は、子犬や子猫がお店で販売されることは、正しくないと考えています。なぜなら、そうした流通に乗る動物たちは、劣悪な環境で無理な繁殖をさせられていることが多いからです。本当にペットのことを考え、ペットにとって良いものをきちんと選んであげられる、そんなお店が必要とされているんじゃないかと思いました」
じゃあ自分でそういうお店を作ろう、そう思ったアーリさんがまず行ったのは、ペットフード会社のリサーチ。原料を調べ、会社の歴史を調べ、スタッフと直接話し、どのブランドが信用できるのかを徹底的に調べあげてみると…意外なことが見えてきました。
「ラッキーなことに、私が信頼できると思える会社は、ひとつやふたつではありませんでした。けっこうあったんです。タイミングが良かったんですね、私のように”ないなら自分で作ろう”と立ち上がった人たちがペットフード業界にもいて、小さな会社をスタートしていました。やっぱり私の思いは正しかったんだと思いました」
カルビン&スージーの店内では、ペットフードのコーナーがかなり広く取られていて、多種多様な商品がずらりと並んでいます。そのパッケージの数々は、どれも、見たことも聞いたこともないブランドばかり…。これらのブランドのほとんどが、家族経営の小さな会社なのだとか。
「大手企業がダメだと言いたいわけではありません。ですが、もしあなたが素敵なコマーシャルを見たとしたら、その会社はマーケティングにお金をかけているという意味です。考えてもみてください、大きなドッグフードの大袋が、1袋$40で売られていたとしたら、その原料に何を期待しますか? 生産する過程があり、工場の維持費があり、流通業者の手数料、輸送費、その他たくさんの費用を引いたら、原料にかけられるお金なんてほとんどありませんよね」
食材は、とてもお金がかかる。だからこそ、原材料の食材にいちばん費用を割くべきだと、アーリさんは考えます。
「私がいつも言うのは、パッケージの表ではなく、裏を見てください、ということ。原材料の欄を見てください。そこにはビーフやポーク、チキン、ダックといったお肉の名前がまず最初に書かれているべきです。多く含まれるものから記載されていますから。もしコーンミールやソイミールといったバイプロダクト(副産物)、または穀物の名前から始まっていたら、その商品はおすすめできません」
プロテイン・バイプロダクトは、日本では肉副産物と呼ばれるもので、日本のペットフード業界でもよく使われている素材です。チキン・バイプロダクトと書かれていたら、鶏肉だけでなく骨や羽毛も含まれている可能性が高く、見た目はお肉そっくりなのに栄養価はまったく違うと言われています。
「野菜や豆にもプロテインは含まれているので、そこからお肉そっくりの見た目のプロテインを作り出すことができます。それは人間が食べても問題ないけれど、犬や猫にとっては、あまり栄養にはなりません。人間が長い腸でゆっくり消化吸収できるのに対し、犬や猫は消化器官がとてもシンプルで、すぐに体内から排出されてしまうため、す早く栄養を吸収できる食材であることが不可欠。プロテインなら何でも同じなわけではないんです。しっかりお肉を食べさせなければ、彼らの身体は正しく機能しません。
また、ペットフードの中には穀物がたくさん含まれているものがありますが、それは”フィラー”と呼ばれ、お腹を膨らませて満腹感を与えるためのもの。犬や猫にとって穀物は、毒ではありませんが薬でもありません。フィラーが入ったペットフードは、お腹は満たしてくれるけれど、栄養価はほとんどありません。ただ身体を通って出て来るだけになってしまいます」
加熱処理していないフリーズドライのお肉のドッグフード
一般的なカリカリのドライフードは高温で加熱調理してあるため、
使いやすく、保管も簡単で、お値段も比較的お手ごろですが、もし選べるなら、加熱調理したお肉よりも、生のほうがベター。生肉に含まれるビタミンやエンザイム・酵素は、加熱すると壊れてしまいます。かといって一般家庭で毎日、生肉を与え続けるのも難しい…。アーリさんがセレクトしたペットフードの中には、生肉がそのまま使われたものが数多く並んでいます。 「お肉をスライスしてエアードライした、ジャーキーのようなフードや、お肉や野菜を小さく切ってフリーズドライしたものもあります。フリーズドライのほうは、そのまま食べてもいいですし、どちらかというと宇宙飛行士が食べる食事のような感じで(笑)水を加えるほうがおすすめです」
「これらのフローズンフードは、生肉のフードを凍らせたものですが、例えば鶏肉・ダック・ターキ
ーは高圧縮処理でバクテリアを殺したり、 様々な検査をしたりしているので、生ですが安全。おそらく普通のスーパーマーケットで売っているお肉より清潔だと思います(笑)。スーパーで買ってきた鶏肉は、必ず火を通して食べますよね? でもこれは生で食べられるのですから」 「犬がガリガリ食べられる骨もあります。もしご家庭で骨を与える場合は、必ず生のままの骨にしてくださいね。骨は加熱すると細胞が硬化し、噛むと細く裂けてくるので、犬の口や胃腸を傷つけてしまいます」
ペットの食へのこだわりから、カルビン&スージーではオリジナルのペット用おやつを生産・販売するまでに。食品添加物や化学物質は一切使わず、ジャーキーの原料は一種類のみというシンプルさ。しかも、クッキーはなんとアーリのお母さんが手作りしているという、ホームメイドのおやつです。
「モットーは”シングル&シンプル”。たとえばビーフジャーキーなら、ビーフをスライスして乾燥させただけ。ペットフードには、原材料にお肉と書いてあっても、ビーフやチキン、ポークと多種類の素材を混ぜていることが多いですが、それだとアレルギーのあるペットには食べさせられません。素材がシンプルなほうが、オーナーも与えやすいし、加工プロセスが少ないので安全に生産することができます」
カルビン&スージーのオリジナルおやつ。パッケージのイラストはアーリさんが描いたもの。
「このおやつはいろんな種類があって、おいもや魚のおやつもあるので、日本に持って帰ることもできますよ」
ジャーキーはこのとおり、お肉を切って乾燥させたシンプルなもので、安全です。
「日本にも良質なペットフードはあると思いますが、ちょっと高価なのが難点ですよね。前に日本に行ったとき、私の店で$50ぐらいで売っているブランドの同じ商品が、2万5,000円で売っているのを見たことがあります。みんな私の店で買えばいいのに!って思ってしまいましたよ(笑)」
安全な食材、栄養価の高い上質な食事が健康を作ることは疑いようもありません。それは人間もペットも同じ。ファストフードとポテトチップスを3食ずっと食べ続けていたら、健康にはなれません。でも、たとえ安全で上質な食材であっても、そこから一歩踏み込んで、ペットの特性を知ったうえで選ぶことも大事だと、アーリさんは言います。
「犬もお肉が必要ですが、猫はもっと必要です。彼らはライオンと同じ肉食動物。そしてキャットフードを選ぶとき
に重要なのは、食べ物に含まれる水分量が多いこと。犬は喉が渇けば自分で水を飲みますが、猫は体内の水分量がギリギリに少なくなるまで喉が乾いた感覚がしないため、自ら水を飲むことがほとんどありません。そのため腎臓の病気になりやすく、歳を取るとだいたいの猫が腎臓を悪くするのはそのためです。ですから、あらかじめ水分が含まれている生肉や缶づめのお肉をあげたほうがいいですね。カリカリのドライフードばかりだと、あまり良くないと思います」
ペットの食や暮らしに関する知識が豊富なアーリさんですが、傷ついたペットたちを救うために、2017年7月、「カルビン&スージー・ハワイ・アニマル・ファンデーション」を設立。一般の人たちによって救助された動物の医療費を負担したり、猫の去勢手術、捨てられたペットの里親探しなどを行っています。
ワイアナエ地区で車から投げ捨てられたトビー。現在はカイルアに住む家族のもとで、ほかの犬と一緒に幸せに暮らしています。
「このお店に来る人たちはペットをとても大切にしていますが、残念なことに、世の中にはそうでない人もます。簡単にペットを捨てたり、傷つけたりしてしまう…。一方で、傷ついた動物を道で見かけたら、放っておけずに助けたいと思う心やさしい人もまた、多いんです。でも、個人で動物病院のお金を負担するのは大変ですよね。中にはお金がない人だっています。そんな状況を少しでも改善できたらと、この活動を始めました」
これまでにカルビン&スージー・ハワイ・アニマル・ファンデーションは、60匹の猫の去勢と、3匹の犬の介助を行ってきました。そのうちの一匹、白い毛にとがった耳がかわいい犬・ アーサーは、心やさしい数人のフォスター家族と過ごし、
介護され、リハビリを行い、そして現在はアーリさんの家族の一員 となりました。 「アーサーが来たばかりの時は、骨と皮だけで、本当にひどい状態でした。毛もはげてしまって、かさぶただらけで。それにとっても臭かったの!(笑)。でもいまは、まるで別の犬かのように元気でかわいくなりましたよ」
一番右がアーサー。残りの3匹はアーリさんの犬たちで、左からエマ、ヘンリー、タミー
アーサーがレスキューされてから、アーリさんのもとで傷を癒やし、ほかの3匹の犬たちと少しずつ仲良くなり、家族として受け入れられていくまでのストーリーが、こちらのブログに綴られています(英語)。救助された直後のアーサーの、あまりにもボロボロな様子がとても痛々しいので、敏感な方は閲覧にご注意を。しかしその後、少しずつ元気になって、最後はとってもハッピー に締めくくられるこのブログ、私は読んでいて涙が出てきてしまいました…。アーサー、やさしい家族と出会えてよかったね!
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ペットはとてもかわいくて、いるだけで心を温め、癒やしてくれる存在。そして人間よりも寿命が短く、不測の事態がない限りは自分よりも先に亡くなっていく存在でもあります。一緒にいられる時間は、じつはとっても限られているんですよね。
だからこそ、元気に楽しく、幸せに暮らしてほしい。ペットは自分で生活を整えたり、食べるものを選ぶことすらできません。だから、オーナーである私たちが、その自覚をもって、良いものを選んであげることが大事なんだと、アーリさんのお話を伺って、あらためて考えさせられました。
カルビン&スージーは、カパフル通り沿い、マラサダで有名なレナーズ・ベーカリーからすぐ近くの場所に1店、そしてカイルアタウンにも1店あります。カイルア店は「クレープ・ノ・カ・オイ」と同じ建物内の便利な立地です。
アーリさんだけでなく、ほかのスタッフさんも、みなさんとっても知識豊富。日本人スタッフさんもいるので、ぜひ、ペットの食事のことや、困っていることなどを相談しに行ってみてはいかがでしょうか?
お肉が含まれているペットフードは日本への持ち込みができませんが、お芋などの野菜や魚だけで作られているおやつなら、日本への持ち込みが可能ですよ。
犬がガリガリ噛める鹿の角。日本にいる犬にあげたら大好評でした! どのサイズがいいか、スタッフさんに相談できたのも助かりました。
ショップオリジナルのマットやクッションも。クッションはカバーだけでも販売しています。
オリジナルの犬用アロハ。大型犬用もあります!
ペットがいる方、これから飼おうと考えている方には、とってもためになるお店だと思うので、ぜひ多くの方に足を運んでみていただけたらと思います。ペットがいる方へのおみやげ探しにも、おすすめですよ!
看板犬、チワワのティノにも会えるかも!
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