よしみだいすけ / いざ、ペレの地へ…「ハワイ島・キラウエア〜プナ」
よしみだいすけさんが綴るコラム第3弾。あえて、今は訪れることができないハワイ島火山活動の中心地、キラウエア火山とその麓プナを語ります。
公開日:2018.06.06
更新日:2018.06.14
「メレ(うた)を旅するハワイ」
第三回:ペレの地へ…キラウエア〜プナAloha!フラ・ナビゲーターのよしみだいすけです。
『メレを旅するハワイ』第三回はハワイ島へ飛びます。先月の噴火が世界中で報道され注目を集めたハワイ島、観光で訪れるのは危険なのでは?と思っていませんか?
結論を言えば、それは誤解です。噴火したり溶岩が流れているのは島の東南岸、キラウエア火山地帯の一部の限られたエリアです。
参考のため、ハワイ島噴火エリアからヒロの街の距離は32キロ(東京ー横浜間、大阪ー神戸間くらい)、コナの街は110キロ(東京ー富士山間、大阪ー備前間くらい)あります。オアフ島のワイキキにいたっては360キロ(東京ー京都間。桜島ー広島間くらい)。恐れることはないのです。この記事執筆現在、閉鎖されているハワイ火山国立公園を除けば、観光地に危険はありません。
(詳しくはハワイ州観光局「【ハワイ島】キラウエア火山噴火に関する最新情報」を参照)
今回の『メレを旅するハワイ』の行き先は、あえて! 今は訪れることができないハワイ島火山活動の中心地、キラウエア火山とその麓プナを選びました。
位置関係を見てみましょう。
(画像提供/ハワイ州観光局)
地図上、赤い四角で囲まれている部分からすこし左下までの地域がキラウエア火山と麓のプナ。
拡大されている部分が今回溶岩噴出した場所。このあたり一帯は歴史上何度も溶岩が流れたハワイ島火山活動の中心地です。先月の溶岩流出の映像です。
キラウエアの火山活動は、何世紀も前から繰り返されている大自然の営みです。プナに溶岩が流れるのは、古くから歌に歌われフラダンサーに踊られてきたキラウエアの風物詩的情景です。抗えない大自然の力、ハワイアンはそこに火の女神ペレの姿を投影します。あなたの目に「破壊」に映るかもしれない火山活動は、ハワイアンにとって「ペレによる大地創造」の営みなのです。
♪Kai koʻo Kīlauea kai koʻo Puna
♪Popoʻi i ke ʻā a Pele
♪ʻO Ke kai ʻula ʻo ke kai ʻōlena
♪Ke ala kai o Pele♪キラウエアのうねり、プナのうねり
♪ペレの溶岩の波にのまれる
♪赤い海、オレンジの海
♪海へ続くペレの通り道[Hōpoe]
クムフラ&ソングライター、カワイカプオカラニ・ヒューエットが書き、マカハ・サンズなどがレコーディングしたフラソングです。
ハワイ神話は伝えます。タヒチからハワイにカヌーで渡ってきたペレが、住む場所を探して島を巡ったあと、ハワイ島キラウエア火山を選びハレマウマウ火口を住処にしたことを。
ハワイ火山国立公園の中にあるハレマウマウをこれまで何度も訪れました。そのどれもが貴重な体験でしたが、特別印象に残った体験があります。そのひとつが、ハワイ島で開催されるフラ競技会「メリー・モナーク」に出場する前日の訪問。地元フラダンサー・グループの一員として、火口を見下ろす崖っぷちで古典フラを奉納しました。体中に電気が走るような体験でした。そこでフラを踊ることでしか感じられない、目に見えないパワー、ハワイの人が言うマナを感じずにはいられませんでした。
こちらの写真は、数年前にカワイカプオカラニ・ヒューエット氏と訪れたときに撮影したハレマウマウ。ペレの姿が見えると多くの人に指摘された写真です。あなたには見えますか?
- キラウエアの麓プナの海岸エリアを舞台にした『Ka Hīnano o Puna』という歌があります。プナに住むカイナニ・カハウナエレが書き、自身がレコーディングした曲です。♪ʻEnaʻena Puna i ke ahi a Pele♪ʻUʻina lā ka huaʻina i Puʻu ʻŌʻō♪赤く燃えるプナ、ペレの火♪音を立てて湧き出す、プウ・オオ
[Ka Hīnano o Puna]
この歌に描かれるのは、プナ住人にとっての日常の景色。海岸沿いに広がるハラの林、山の手のレフアの森、そよぐモアニアラ(甘く香るの意)という名前の風、平和なプナの夜空に浮かび上がる溶岩の赤い明かり。
プウ・オオとは、プナに溶岩を流し続ける火口の名前です。
1990年には人気の観光地だったカラパナのブラック・サンド・ビーチがプウ・オオからの溶岩に呑み込まれました。昨年ハワイ島プナを訪れた時、そのビーチがあった場所に行ってみました。溶岩流で寸断された道路は、カイム・ビーチ・パークで行き止まりになっていました。真っ黒な溶岩に包まれた海岸線への入り口には看板が立っていて、英語でこう書かれていました。
「あなたが立っているのは、かつて海だったところに1990年の溶岩流が作った新しい大地です。約12キロ先にある溶岩火口プウ・オオからは今も溶岩が流れています。」
溶岩の流れによって住む場所を追われることを嘆き、被害者意識丸出しで泣き叫ぶ移住者を横目に、ハワイアンはこう言います。
「ここはペレのホームです」
ペレが自分の家を大掃除するのを止めることはできない、仮住まいさせてもらっている私たちにできるのは、家を綺麗にして明け渡すこと、そして被害者が出ないよう助け合うことだけだと。
爆発的ではないゆっくりとした流れのハワイ溶岩の特徴のおかげで、限られてはいるものの避難準備をする時間が、そこで暮らすことを選んだ人々にはあります。
人々が避難した後のペレの通り道には、ハワイ系の住人が置いたであろう葉で包まれたお供え物が見られます。
大自然の営みである溶岩の流れに女神の姿を映し、畏敬の念を持ってすべてを受け入れ崇めるハワイアンの伝統的な価値観に出会う時、ぼくの心は震えます。
キラウエアの火山活動による死者、行方不明者の数はゼロです。
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ハワイアン・ソングに歌われるハワイの知られざる景色、パワースポットを文章・写真・動画で綴るハワイガイド
よしみだいすけ
Daisuke Yoshimi
文筆家、フラナビゲーター
ハワイ州観光局アロハプログラム講師、フラやハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・講演活動を行う。●著書
たくさんのメレから集めた言葉たち(1〜4)
メレ旅(上下巻)
Live Aloha アロハに生きるハワイアンの教え
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