メレ（うた）を旅するハワイ
第八回：カウアイ島アナホラ

メレ(mele)とはハワイの歌のこと。
古来よりハワイの人々は、愛し大切にする土地・場所を歌にしてたたえてきました。その文化は今も受け継がれていて、特定の場所をたたえる新しいハワイ語の歌が今も日々生まれています。
ハワイ語の歌に、ハワイのどんな景色が描かれているのでしょうか？
毎月メレに歌われるハワイの場所を訪れて、そこで見る景色をご紹介しています。

第8回となる今回の訪問先は、カウアイ島アナホラです。

アナホラのことは、前回のワイアレアレ、第2回のハナレイのように多くのメレに歌われているわけではありません。実際、ぼくが編纂した「たくさんのメレから集めた言葉たち」シリーズで選曲したメレ300曲中、唯一タイトルもずばりの『Anahola』という曲にしか歌詞に地名が出てきません。だから正直アナホラをあまく見ていました。この場所の素晴らしさに心から感動したのは、書籍『メレ旅』執筆のための取材旅行で実際に訪れた昨年のことでした。（27年のハワイ在住期間に何度もカウアイ島を訪れていたのにもかかわらず・・・）
アナホラってどこにあるの？というあなたは地図を確認ください。

「アナホラ」とは、カウアイ島東部カワイハウ区域の地名で、山・土地・湾・村・川がこの名前で呼ばれています。
歌の中ではアナホラはどのように描かれているのでしょう？
往年のハワイアン・シンガー、Kawai Cockettがレコーディングした『Anahola』にはこう歌われます。

Hanohano Kalalea kau mai i luna
ʻO ka pali kaulana aʻo Anahola
雄大なカラレアがそびえ立つ
名高いアナホラの険しい丘

歌の中には、アナホラでひときわ存在感のあるランドマーク的な山のこと、そしてその山を背景に広がる海辺の光景が描かれています。歌詞にあるコナナエは、伝説が伝える矢に射抜かれてできた山の穴のこと。そしてアムはアナホラにある一角の名前で、そこに吹く風の名前でもあります。唐突に（船の？）ピンと張り詰めたロープのことが出てきて首を傾げたくなるけれど、風に吹かれて張る帆を連想させる気もします。
調べると20世紀初頭のアナホラの海辺には、船の出入りがあったらしい。
全体を訳しても、正直なにやら掴みどころがないメレだと感じていました。そんなアナホラに、念のため寄ってみて本当に良かったと今思います。
そこには美しく広がるビーチと海を見下ろす切り立った赤い山の絶景が広がっていました。

アナホラへは、リフエ空港からクヒオ・ハイウェイ（56号線）を北へ22キロ、30分ほどのドライブ。歌の中の山、カラレアが見えてきたら、アナホラ・ビーチに続く道を海の方へ右折。辿りついたアナホラ・ビーチは、理屈抜きにただただ美しい南国の大自然に包まれたような、幸せな気持ちになる場所でした。エメラルド・グリーンの海と白く眩しい砂浜。よく見ると、桟橋の足場の名残がビーチの途中にあります。そのそばで、他に誰もいないアナホラの海を眺めていたハワイアンが教えてくれました。ここがカウアイ島で生まれる命の魂が着地する場所なのだと。そんな言葉がストンと腑に落ちてしまう、不思議な場所でした。

『Anahola』に歌われるカウアイ島アナホラをご紹介しました。
次のハワイでは、ぜひあなたもカウアイ島を訪れてアナホラの絶景をその目で！
というか、ぼくが今月ご案内するツアーに現地参加しませんか？

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