ワイキキの癒しの岩、カフナストーン
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第9回の舞台は、オアフ島。ワイキキ中心部にある4つの巨石にまつわるお話です。
公開日:2019.02.11
ワイキキの真ん中に鎮座する
4つの神聖な巨石Aloha! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。最近、ハワイ島のスポットが続きましたが、今回は久々にオアフ島の史跡がテーマ。それもワイキキの真ん中、クヒオビーチに鎮座するカフナストーンについて、ご説明しましょう!
カフナストーンとは、カフナ(神官)の不思議な力がこもるとされる、4つの巨岩のこと。ちょうどワイキキ警察署の横にあり、周りをぐるりと鉄柵に囲まれているので、あ、見たことある~、という方も多いのではないでしょうか?カフナストーンという名称のほか、「ワイキキの癒しの岩」や「魔法使いの岩」との呼び名でも知られています。魔法使いの岩というのは、私としては全くピンときませんが…。
カラカウア通りからもすぐ近く
写真の通り、一見、何の変哲もない岩々なのですが、これが日本なら、岩の周りには紙垂(神社でよく見る白い紙の紐というかロープ)が巻かれているであろう、世にも神聖な岩なのです。この岩については、以下のような伝説が残っています。
タヒチからやってきた
神官のパワーが宿る?昔々の大昔(16世紀だそうです)、タヒチから4人のカフナがやって来て、ワイキキで病気の人々の治療を始めました。4人は不思議な癒しのパワーを持っており、その名声はハワイ中に轟いていたとか。
ところが4人はついに故郷に帰ることになり、土地のハワイアンに告げました。
「残念だけれど、もうすぐタヒチに帰らなければならない。ぜひ自分たちの記念碑を立て、私たちを時々思い出してほしい」岩の前には祭壇も設けられている
そこでハワイアンは、カフナの指示通りにカイムキからはるばる、4つの岩を運んできました。実に数千人のハワイアンが力を合わせ、巨岩を運んできたのだそうです(カイムキとワイキキは、3キロ以上離れています。しかも当時のワイキキは湿地帯が多かったので、いったい16世紀の昔、どうやってそんな巨岩を運んできたのか。今でも人々は首を傾げるばかりです)。
4人のカフナはそれぞれ、岩にカパエマフ、カハロア、カプニ、キノヒという自分の名前を与え、手をかざして癒しの力を岩に残すと、祈祷を捧げました。最後にハワイアンはカフナのために祝宴を開き、4人はタヒチへと帰っていったそうです。
今も昔も、人々は
カフナストーンに祈る以上のように、16世紀から神聖視されてきたカフナストーン。王族方もカフナストーンには敬意を払い、特にハワイ王国7代目のカラカウア王の妹、リケリケ王女は岩の一つ一つにレイを捧げ、よく祈っていたことが知られています。リケリケ王女は現在のプリンセスカイウラニホテルのすぐ脇に住んでいたので、カフナストーンを日常的に訪れていたのでしょう(ちなみに、カイウラニとはリケリケ王女の一人娘の名です)。
ハワイ語と英語の説明ボードも設置されている
…実は私の友人も、リケリケ王女と同じくカフナストーンの熱心な信奉者でした。これは思いきり私的な話であり、自著「ミステリアスハワイ」にすでに詳しく書いていますが、あまりに印象深い逸話なのでご紹介させてくださいね。
友人はカナダ出身で、ハワイが大好き。毎夏ハワイで休暇を過ごしていましたが、ある夏、このまま不法滞在してしまおうか…と考えたそうです。夏の終わりに、どうしてもカナダに帰りたくなかったのですね。
友人はカフナストーンの不可思議な力を信じており、自分も岩にレイを捧げてはお祈りを捧げるようになったそう。そして帰国について逡巡していた、ある日のこと。岩から「カナダに帰れ」とメッセージを受け取ったのだそうです。
何も岩から声がしたわけではないのですが、レイを捧げて祈っていたその時に、そんな言葉を岩から受け取った…と彼女は感じたわけです。
そこで友人は、カナダに帰ることを決意。自宅に戻ると、なんと、アメリカ政府から永住権当選のお知らせが届いていました。友人はずっと以前に永住権に応募していたのですが、落選。ところが1年後に当選者が追加され、友人はそのラッキーな追加当選者の一人だったのです。
その通知を開いた時、手続きの締め切りが目前だったそうで、せっかくの永住権当選がもう少しで無効になるところでした。あのタイミングで帰国しなかったら、どうなっていたか。友人は深く岩に感謝し、無事、ハワイに永住したのでした。
以上、あまりに不思議な話ではありますが、まぎれもない実話です。…思うにカフナストーンには、癒しのパワーに限らず、聖なるマナ(ハワイ語で霊力や気)がみなぎっているのかもしれませんね。
カフナストーンの位置は、ワイキキ警察のダイヤモンドヘッド側。ハイアットリージェンシーワイキキから、カラカウア大通りを渡ったあたりにあります。次回のハワイで、ぜひ訪問してみてください!
ハワイの不思議なお話〜ミステリアスハワイ
森出じゅんさんの著書「ハワイの不思議なお話〜ミステリアスハワイ」。
歴史や神話、伝承、スピリチュアルな世界まで、ハワイの知られざる一面を、独自の調査・研究に基づき、じゅんさんならではの視点で紹介した一冊です。読めば、ハワイに描くイメージが変わるかも? ディープなハワイを知りたい方は、必読ですよ〜!
森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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