メレ（うた）を旅するハワイ
第十六回：オアフ島ラニフリ

メレ(mele)とはハワイの歌のこと。
古来よりハワイの人々は、愛し大切にする土地・場所を歌にしてたたえてきました。その文化は今も受け継がれていて、特定の場所をたたえる新しいハワイ語の歌が今も日々生まれています。

ハワイ語の歌に、ハワイのどんな景色が描かれているのでしょうか？毎月メレに歌われるハワイの場所を訪れて、そこで見る景色をご紹介しています。

第16回となる今回の訪問先は、オアフ島ラニフリです。

オアフ島の中で、もっとも多くのハワイアン・ソングに歌われている地名は何だと思いますか？
『たくさんのメレから集めた言葉たち』シリーズ最新刊Vol.4が出たので、改めて4冊400曲分のデータを元にトップ５を割り出したら、結果はこのようになりました。
１位　マノア（11曲）
２位　コオラウ（10曲）ヌウアヌ（10曲）
４位　ワイキキ（6曲）ラニフリ（6曲）ホノルル（6曲）
というわけで、今回はまだこのコラムで訪れていない４位のラニフリです。
ラニフリってどこにあるの？というあなたはGoogle Earthでご確認ください。

（Google Earth リンク）
https://earth.app.goo.gl/C6zFPq

「ラニフリ」とは、オアフ島のコオラウ山脈にある峰の名前です。「ラニフリ」はハワイ語で Lani（=天・空・王族）huli（=回る・変わる）。ヌウアヌ渓谷とカリヒ渓谷の間にある峰で、その頂上はほとんどいつも雲に包まれています。

上の動画はウィンドワード側から見たコオラウ山脈です。真ん中の峰がラニフリ。ラニフリの頂に登るトレイルもありますが、観光客にはハードルが高い上級者向け。気軽にラニフリを体験するには、観光名所ヌウアヌ・パリ展望台に行くのがいいでしょう。崖を見下ろすあの場所に立てばラニフリの峰が左手に見えます。

歌の中でラニフリはどのように描かれているのでしょう？
ケアリイ・レイシェルが歌う「レイ・ハリア Lei Haliʻa」にはこう歌われます。

He ahu aʻo Lanihuli
No ka noe o Nuʻuanu
Nuʻalia i ka pōʻai pali
I ka pā iki mai o ke Kona ē
（詞：Puakea Nogelmeier）

祭壇のごときラニフリに
ヌウアヌの霧の供え物
切り立つ崖の上に
コナウィンドが集めたもの

ラニフリが神々しく描かれています。霧雲に包まれる頂には、麓ではなかなか見ることができない貴重なハワイの花が咲いています。
名曲「プア・アヒヒ Pua ʻĀhihi」にこう歌われます。

Haʻina ka puana no kuʻu lei
Ka pua ʻāhihi aʻo Lanihuli
（詞：Mary Kawena Pukui）

歌に伝える大切なレイ(人)
ラニフリに咲くアヒヒの花

ラニフリを歌うメレの中でも新しいのが、チャド・タカツギの「へ・アロハ・ヌウアヌ He Aloha Nuʻuanu」です。

He aloha Nuʻuanu i kaʻu ʻike
I ke kāwelu haʻa i ka ʻolu
Luhiehu lāʻī e liko nei
A he liko nō au no Lanihuli
（詞：Lisa Takatsugi）

我が愛しの地、ヌウアヌ
穏やかに踊るカヴェルの中
青々としたティーリーフはキラキラ
私はラニフリの末裔

ヌウアヌ渓谷の地形の成り立ちを伝える神話の中に、ラニフリという名前の登場人物（女神）がいます。ラニフリはこの地の峰として今も存在し続けています。「ラニフリの末裔」というのは、代々ヌウアヌに住む家系の人が、土地の子としての自分を表現しているのでしょう。

ヌウアヌの頂、ラニフリを歌うメレをご紹介しました。次のハワイでは、ぜひあなたもラニフリを愛でにオアフ島ヌウアヌへ！

※前出「レイ・ハリア」の作者Puakea Nogelmeierさんとラニフリ（2011年撮影）

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