よしみだいすけのフラナビ・コラム:メレ(うた)を旅するハワイ
よしみだいすけさんが綴るコラム第17弾。ハワイ島マウナケアで繰り広げられている「プロテクト・マウナケア」活動をサポートする、平和的戦士たちの歌をご紹介。
公開日:2019.08.07
更新日:2020.01.16
メレ(うた)を旅するハワイ
第十七回:山を護る平和的戦士たちの歌メレ(mele)とはハワイの歌のこと。
古来よりハワイの人々は、愛し大切にする土地・場所を歌にしてたたえてきました。その文化は今も受け継がれていて、特定の場所をたたえる新しいハワイ語の歌が今も日々生まれています。ハワイ島マウナケアで繰り広げられている「プロテクト・マウナケア」運動に世界の注目が集まっています。
7月15日の週、現地先住民の反対を押し切って、州政府が山頂への巨大天文台TMT建設工事を強行しようしました。工事着工を阻止するために座り込みをしたグループのうち、ハワイ・コミュニティーの長老たち30人余りをハワイ州政府の命令で配置された警官らが逮捕・連行し、その様子がニュースやSNSで伝えられました。
ハワイの自然、文化、信仰を守る先住ハワイアンへの心ない措置に対して、ハワイと縁のある著名人たちが異議を表明しはじめました。
ブルーノ・マーズ
ハワイ出身のグラミー受賞アーティスト、ブルーノ・マーズは「マウナケアを護ろう」という意味のハッシュタグ#protectmaunakeaを添えてメッセージを贈りました。
「愛しているよ、ハワイ。そしてぼくはあなたとともにある。」
ジャック・ジョンソン
ハワイ出身シンガーソングライター、ジャック・ジョンソンはマウナケアの現地に赴き、TMT建設工事阻止のために集まっている群衆のためにこんなメッセージを贈り、フリー・ライブを行いました。
「私たちは護る、私たちが愛するもの、私たちが愛する人々を。自分にできる限りのことをするためにここに来た。僕が声を上げることでみんなの声をより多くの人に聞いてもらうために。」
ジェイソン・モモア
ハワイ出身俳優ジェイソン・モモアは以前よりプロテクト・マウナケア運動を公然と支持してきました。たとえばこんなメッセージとともに。
「アロハがいつも勝つ。私の家族、友人、ファンのみんなにお願いする。TMTに対して私たちは引き下がらないこと、常に非暴力とアロハを守っていることを世界に示してくれ。」
今回激化した工事阻止運動をサポートするため、自ら現地へ赴き活動家たちに敬意を示しました。
そのほかドウェイン・ジョンソンやレオナルド・ディカプリオがプロテクト・マウナケア運動を支持することを公表しています。
ハワイアン・ミュージシャンたちも現地を訪れたり、運動をサポートするメレを贈ったりして応援を続けています。
そんなメレを2曲紹介しましょう。
ショーン・ナアウアオはカワイカプオカラニ・ヒューエットが書いたこのメレをいち早くシェア。
『E ō ka Lāhui』はこう歌います。
呼びかけるのはハワイ国民
護るために立ち上がった
大切にしよう我らの地
ここにハワイ
座り込みをしたハワイアン・クプナが逮捕されてしまうのを見たジョシュ・タトフィは、マウナケアを訪れ、活動家クム・ヒナとメレを共作。ミュージック・ビデオとして発表しました。
『For the Lāhui』にはこう歌われています。
我が祖国よ
勇敢なる民よ
立ち上がれ
断固として
ハワイの地の生命は
正義のもとに永続する
彼らが歌うのは、ハワイの価値観の基本「アロハ・アイナ」の心です。大地こそがすべての基本。あなたが大地を大切にするなら、大地があなたを守るだろう。そういう考え方です。
マウナケア山頂への建設工事をくい止めようと運動する人々は、TMTそのものや科学を否定しているのではありません。彼らにとって大切な信仰の拠り所である霊山を汚されることに異議を唱えているのです。
そんな彼らのために日本人は何ができるでしょう?TMT建設地の決定権を持つ日本の国立天文台に、建設候補地変更を求めるというのもひとつのアクションです。
オンライン署名運動には以下より参加できます。
よしみだいすけ
Daisuke Yoshimi
文筆家、フラナビゲーター
ハワイ州観光局アロハプログラム講師、フラやハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・講演活動を行う。●著書
たくさんのメレから集めた言葉たち(1〜4)
メレ旅(上下巻)
Live Aloha アロハに生きるハワイアンの教え
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