古代ハワイアンの自然農法を伝えたい…2人の熱い想い

古代ハワイアンの自然農法を伝えたい…2人の熱い想い

ノースショアでハワイ文化継承・教育団体「ナ・メア・クポノ学習センター」を運営するスティーブンさん&フェリスさんにサーシャがインタビュー。

公開日:2021.03.31

ロコガール サーシャがお届け! Aloha対談コラム

アロハ! サーシャです。

ハワイで活躍するアーティストやスモールビジネスを営む方々にインタビューをし、よりディープなハワイの魅力をお届けする「Aloha対談コラム」。

 

第6回は、ノースショアにあるハワイ文化継承・教育団体「ナ・メア・クポノ学習センター」を運営するスティーブンさん(写真左)とフェリスさん(写真右)にインタビュー。

6フィートの広大な土地でタロイモ畑をはじめとする植物を栽培し、ハワイならではの自然を守り伝承するナ・メア・クポノ学習センターは、私が幼少期から何度も訪れている思い入れのある場所なんです。今回は私にとって家族のような存在のおふたりに、学習センターを作ろうと思ったきっかけや今後の目標などについて伺いました。

スティーブン/Steven(写真左)
オアフ島出身。ナ・メア・クポノ学習センターの主催者。大工、ナチュラルファーメスト、ウクレレメーカーと多彩な才能を持つ。

フェリス/Felis(写真右)
オアフ島出身。銀行員として勤めた後、Queen Liliuokalani Children’s Centerでクムとしてフラ、ウクレレを教える。現在はスティーブンのパートナーとして、ナ・メア・クポノ学習センターの運営に携わる。

1999年から2人でタロイモ畑の栽培をスタート。2008年にワイアルア・モク(地区)に移り、ナ・メア・クポノ学習センターをスタート。2020年には、メンタルヘルスに関する団体「サマリタリタン・カウンセリング・センター・ハワイ」のホオメネメネアワードを受賞。

「ナ・メア・クポノ学習センター」の公式ウエブサイトはこちら>>>
インスタグラムはこちら>>>

人生の目的、使命は、「古代ハワイアンの地球に優しい生活を教えること」。

サーシャ:アロハ!スティーブンさん、フェリスさん。
おふたりは、私のことを幼い時から知っていて、私の成長を見届けてくれているんですよね。

スティーブンさん:そうだね。最近、サーシャとサーシャの弟のココが写っている昔の写真を見返してたんだけど、ココがすごく若かったよ。

サーシャ:ですよね! ココが赤ちゃんみたいで可愛いんです。今は…もう全然……(笑)。

 

 

フェリスさん:サーシャと初めて会った時のことを思い返してみると、よく笑って、ハッピーで、礼儀正しくて、お手伝いもよくしてくれて…本当に‘OLU’OLU(ハワイ語で「楽しい、風のような、リフレッシュ」などの意味。「心地の良い、ナイスな」という表現)な子だったなあ。日本の高校生が来た時も通訳のボランティアをしてくれたよね。

あとは、砂糖とバターを絡めたタロを炒めていた時に、サーシャが「美味しい!」って叫びながらずっと食べていて……(爆笑)。

サーシャ:(笑)。

スティーブンさん:ついこないだのことのように感じるなぁ。

サーシャ:そうですねぇ、懐かしい…。
おふたりはなぜ「ナ・メア・クポノ学習センター」をスタートしようと思ったんですか?

ナ・メア・クポノ学習センター

 

スティーブンさん:ナ・メア・クポノ学習センターを始める前は大工として働いていました。その頃ハワイアンスタディーやコミュニティワーク(フィールドスタディー)などを勉強していて、畑仕事に携わるようになったんです。

フェリスのいとこが「アイナベースラーニング(土地や自然を基本に考えた学習)」をしていたのですが、土地全体がまるで教室のように学びの場になっていて…とても素敵なアイデアだと思いました。だから、それを自分たちでも実践しようと思ったのがきっかけです。毎日、通勤時間や勤務時間にナ・メア・クポノ学習センターが実現した時のことを想像しては、ワクワクしていたなぁ。

未来は今の若い人たちによって築かれると実感していて、若者たちに自然を基本としたものの考え方を知ってもらうことは地球にとって素晴らしいことだと思います。

フェリスさん:私は以前銀行で働いていたのですが、そこで出会ったお客さんからハワイアンスタディー、ハワイ文化研究のことを聞き、ハワイアンスタディーの学校に入り直し学びました。私はその頃すでにフラクムもしていたのですが、「私は銀行で働くために生まれたのではない」と感じたんです。それから、自分の人生の目的についてじっくりと考え、銀行を退職しました。

1980年代にはすでに環境破壊が進み始めていて、何か行動を起こさなければと……。そのときに、私の人生の目的、使命は、「若者に古代ハワイ人の地球に優しい生活を教えること」だと気付いたのがきっかけです。

その後、小学校でウクレレを教えるようになり、クイーンリリオカラニチャイルドセンターでフラを教えていました。そのなかで、古代ハワイアンの環境に優しい生活の仕方も教えていきたいと思ったんです。

私には子どもがいませんが、多くの教え子たちが自分の子どものように感じられて……。「この子たちにきちんと自然環境のことを学んでほしい」と強く思いました。教え子の中にローレンまつもとさんがいて、彼女は今ハワイ州の政治家として頑張っていますが、会うたびに「クム!ありがとう!」と言ってもらえて嬉しい限りです。

サーシャ:それぞれにいろんな想いがあった中でナ・メア・クポノ学習センターが誕生したんですね。

フェリスさん:今、私たちは環境問題における危機的影響を受けています。地球温暖化により土地が沈み、太平洋の島がどんどんなくなり、太平洋の島で暮らす人たちの生活に大きな影響を与えています。地球を守るためにも、環境破壊をできるだけ抑える方法を見つけなければなりません。

サーシャ:ナ・メア・クポノ学習センターがあるノースショアはどんどん変わっているように感じますが、ここに来ると良い意味で「何も変わらないな」と感じるんですよね。人が自然と繋がれる特別な場所だと思います。

サーシャ:私が今「サーシャのサポートハワイ」(サーシャがハワイのローカルをサポートするために行っている活動)を通して行っていることは、ここで学んだことに影響されているなと感じるんです。アロハスピリットもそうですが、たとえばアロハシャツを作った後に残る切れ端を使って商品を作ったり、無駄を出さないためにも注文を受けてから作り始め本当に必要な分だけを受注生産として製作したりしています。ここで学んだからこそ実践できているんだと思います。

ハワイアンの考え方は「自然から受け取ったものを自然に恩返しする」。これは私にとっても非常に大事なコンセプトです。

フェリスさん:サーシャは、インフルエンサーとして自分のプラットフォームを使って他の人にも伝えていってるから素晴らしいと思います。影響力のある人は消費を推奨するだけではなく、その消費の影響と環境をどうすればいいのかを考えながら他の人に影響を与えてほしいです。

サーシャ:生きるために消費することは必要ですが、バランスを考えるのが大切ですね!

フェリスさん:はい、まさにそれが私たちのゴールです!

タロイモ畑を通して古代ハワイアンが行っていた自然農法を伝えていく。

サーシャ:ナ・メア・クポノ学習センターでは主に何を教えていて、どんな体験ができますか? そしてどんな方がここを訪れるんですか?

スティーブンさん:コロナ前は小学生から大人までたくさんの方がここに来て、タロファームや植物の世話、小動物との触れ合いなど、さまざまなファーム体験をしていました。世界中から来た生徒たちはファームで採れた食物でハワイアンフードを作ったり、フィジカルチャレンジ・メンタルチャレンジの方々は「TAROピー」として自然の中で体験学習をしたりしていましたね。日本からも修学旅行で体験学習に来られていましたよ。

フェリスさん:小学生から高校生のグループをはじめ、高齢のグループ、教会など、自然と繋がり学びたいというグループをすべて受け入れています。彼らが学びたいことに合わせてこちらもプログラム内容をカスタムします。自分で畑を起こしたい人やハワイアンゲーム、クッキングをしたい人もここに来ますね。日本からの大学生も受け入れたこともあります。

スティーブンさん:ナ・メア・クポノ学習センターの最大の目的である、「どうしたら今の時代に、地球に優しく生きていけるか」を教えています。例えば、タロイモ畑を通して古代ハワイアンが行っていた自然農法を学ぶことができます。

ただ、コロナ渦の今は、残念ながらそういった学習もできない状態です。

敷地内にあるタロイモ畑

 

フェリス:しかし私たちはハワイアンのコンセプト、アロハの心を発信し、伝えることはできます。この心が今の社会にはとても大事なことだと思っています。

フェリスさん:今後コロナが落ち着いたらすぐにでも体験学習を再開させたいと思っています。たとえばサマーワークショップも行う予定です。ククイの実を使ってキャンドルやオイル、積んだ花からレイ作りを学ぶクラスや、ウィービング、ココナッツオイル作り、ラウハラ編みクラスなどを予定しています。
最初は木を見ても「ただの木だ」としか思わないのが、ワークショップの後は木を見て「キャンドルができる!オイルができる!」などと、木に自分たちの生活を見い出し、大地を資源として考えられるようになるはずです。そんな風にここでの経験を通して、視野を広げてもらえたら嬉しいなと思います。

サーシャ:楽しそう! サーシャのサポートハワイでも教育に関するプログラムを行っていきたいと思っています。日本の旅行者をナ・メア・クポノ学習センターに連れてきて、自然農法やハワイの文化・伝統などを学んでみてほしいです。

フェリスさん:ぜひ!

サーシャ:ハワイアンスタイルの自然農法について知らない方も多いと思います。詳しく教えていただけますか?

フェリスさん:伝統的な方法で、ひとつの水源から水をタロイモ畑へ、その隣りの畑、またその隣りの畑へと流していきます。流れていくうちに、そこに生息する魚の糞などで水は栄養を含んでいきます。これを元の水源に戻すことでより良い水を大地に返せるんです。
しかし、この古代ハワイアンのやり方だと、水源から1番遠くにあるタロイモ畑へ回る水は温かくなり、タロイモが腐ってしまいます。現代ではパイプを使い、最後の方にあるタロイモ畑にも冷たい水が流れるようにしています。古代ハワイ人もその時代にパイプがあったら使っていたんじゃないでしょうか。

敷地内には湧き水が溜まった水源がある

 

フェリスさん:ハワイにとって水は非常に貴重で大事なものです。タロの育成に使ったこの水を海に返すときには地球環境に悪影響を与えないように自然の状態で戻せるように工夫しています。

スティーブンさん:パイプによる環境へのダメージはほとんどないですしね。自然農法は地球を癒すのに良い方法です。古い方法も新しい方法も地球に優しいのであれば実践したいですね。
そういった意味も込めて、自然なサイクルのために農薬や化学肥料などは使っていません。肥料もフルーツのノニから作っているんです。ノニから摘出したものを発酵し、薄めて植物へ与えるんです。

フルーツのノニ

 

サーシャ:なるほど。「すべてのことは繋がっていて、サイクルになっている」というコンセプトは、環境のことを考える上で本当に重要だと思います。そのことをわかっていて、大地に敬意をはらっていた古代ハワイ人は本当にすごい! おふたりは自然農法を誰から教わったんですか?

スティーブンさん:フィールドスタディーでも勉強していましたが、タイ、フィリピンなど世界中で自然農法を教えている「Cho Global Farming」のチョ先生から本格的に学びました。今は月に1回、世界中にいる他の自然農法の農家と集まってクラスを開いたり、コミュニティを作ってお互いをサポートしたりしています。必要な時はお互いにヘルプし合います。このスタイルの自然農法は30カ国くらいに広がってきているので嬉しいです。

 

サーシャ:ところで、この前Kanikapilaセッションを一緒にしていただいてすごく楽しかったんですが、その時にスティーブンから貸してもらったウクレレ。あれは大工をしているときに街で捨ててあったコアの木で作ったと聞いて驚きました!

そしてウクレレ製作といえば、この敷地内でワークショップとしてウクレレの工房・スタジオを開いているんですよね。

フェリスさん:以前クイーンリリオカラニ・チルドレンズセンターで、子どもの成長をサポートするカリキュラムの一環として生徒の家族にウクレレ作りを教えていました。スティーブンも7年くらい学校で教えていて、ハワイアンのカリキュラムサイトを作りました。今はもうそのプログラムはやめてしまいましたが、その代わりにこのナ・メア・クポノ学習センターでウクレレ製作やウクレレ演奏のレッスンをはじめ、様々な事情によりセラピーや助けが必要な家族へ向けたウクレレ作り教室を開催したいと思っています。

 

廃棄されていた木材を使用し、スティーブンさんが手作りしたウクレレ

 

スティーブンさん:教室でウクレレやハワイ王国の歴史を学ぶことは人を豊かにすると思います。教室で知り合いコミュニケーションをとることで人との繋がりが広がりますし、ウクレレ作りを学ぶことでスキルも身につきます。製作過程で木に触れ、木材などを取り扱う仕事に興味を持つ人もいるかもしれません。物ができていくことに喜びを感じたり、完成させることで自信がついたりするはずです。

 

世界中の「ヘイト」に打ち勝つために、みんなの愛の種を植え続けてほしい。

サーシャ:タロイモ畑をはじめ、6エーカーの広い土地を管理するのは大変ではないですか?

広大な土地では何十種類もの植物を栽培し、動物を飼育している
写真右:ヒヨコを見つけて撮影するサーシャ

 

フェリスさん:今直面しているのは、コロナ禍による資金難ですね。今は本当に資金繰りが厳しいんです。今年で利益が出なくなって3年めなので今は助成金に頼っています。何かしなくてはと思っていますが、まだ模索中です。
ナ・メア・クポノ学習センターは商業用施設ではないので、ボランティアで成り立っています。ボランティアのみんながいてなんとか成立しているので本当に感謝しています。まさに家族のような存在です。

サーシャ:私にも何かできることはないかと思い声を掛けたら、嬉しいことに一般の方からご寄付をいただきました。その寄付金でナ・メア・クポノ学習センターオリジナルのTシャツを150枚用意しましたが、たくさんの方に購入いただいています。予定数を売り切ったら、また次のナ・メア・クポノ学習センターへの寄付用のTシャツ販売を始める予定です!
(※Tシャツに関しては最後の「サーシャからのお知らせ」をご覧ください。)

スティーブンさんフェリスさんマハロ!ありがとうございます!

ナ・メア・クポノ学習センターへ寄付金を贈呈するサーシャ

 

サーシャ:最後に、おふたりの今後の目標は何ですか?

フェリスさん:ここのコミュニティだけでなく世界中に影響を与えていきたいです。母なる地球を愛し、どこにいても何の宗教があっても同じ地球に住む人間だということを理解してもらいたいです。私たち一人一人が環境のことを考えていかなければなりません。改善していきたいという意思を地球上のみんなが持っていると信じています。
世界中にたくさんの「ヘイト(憎しみ)」がありますが、みんなの愛で打ち勝てると思います。だから愛の種を植え続けてくださいね。
あとは、資金調達をして建物やテントを建てたいですね。

フェリスさん:今、イベントエリアがあるのですが、そこにフラマウント(ステージ)を作っています。出来上がったら何かイベントをしたいです。

スティーブンさん:国際文化交流なども開催してみたいです。

フェリスさん:自然農法のカンファレンスなども開きたいです。

サーシャ:素敵ですね〜、これからもずっと応援しています!本日はどうもありがとうございました。マハロ!

 


 

★インタビューを終えて★

私が小学生の時からよく遊びに行っていたナ・メア・クポノ学習センターに来ると、実家に帰ってきたようなホッとした気持ちになれるんです。

ハワイでは、血が繋がっていなくてもOhana(ハワイ語で「家族」)になって、親しみをこめて自分の尊敬する男性を「アンクル」、女性を「アンティ」と呼びます。ハワイの人を無条件で愛するOhanaの感性は大きく、穏やかで本当に美しいと思います。

ハワイの美しさを抱え込むようにして次の世代に伝えている、スティーブンとフェリスを胸を張ってアンクル、アンティと呼べることはすごい幸せです。これからもナ・メア・クポノ学習センターを通して自然との共存やアロハの心を多くの人に知ってほしいと思っています。

 

【サーシャからのお知らせ】

私がデザインした、ナ・メア・クポノ学習センターのオリジナルTシャツがサーシャのサポートハワイ公式ウエブサイトからご購入いただけます!

Tシャツのブルーはノースショアの空とナ・メア・クポノで沸く水の色、茶色は母なる大地をイメージしました。売り上げの50%はナ・メア・クポノ学習センターの活動を支援する寄付金となります。

★ハワイに恋して!最新情報★

次回放送日:4月5日(月)21:00〜
放送内容:#67「ここに全てがある!改めて楽しむワイキキ」

今年で11年目を迎える「ハワイに恋して!」が4月からは月曜日21:00(日本時間)へお引越し!今月はハワイの新しい状況もお伝えしつつ、過去放送した「ハワイに恋して!」を番組MCまことちゃんとロコガール・サーシャが振り返ります。

ハワイに恋して!の公式ウエブサイトはこちら>>>

サーシャ/Sasha

大阪生まれの日英バイリンガル。幼少から1年の半分は米国で過ごす生活を送り高校からハワイへ移住。17歳の時に出演したテレビ番組がきっかけでタレント活動を開始し、現在BS12 トゥエルビ「ハワイに恋して!」にレギュラー出演中。

サーシャのインスタグラムはこちら>>>
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