ハワイ州旗の歴史や誕生秘話、赤、白、青の3色の意味も解説!
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第21回。今回は初の番外編!意外と知られていない?ハワイ州旗に関するお話です。
公開日:2021.04.30
更新日:2021.05.05
国旗&州旗のデザインに見る
カメハメハ流の政治感覚ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。これまでつれづれにハワイ各地の逸話を書いてきましたが、今回は初の番外編! ハワイの州旗についてお話ししましょう。ハワイの旗なのに、なぜかイギリスとアメリカの国旗によく似ている…。そんな風に感じる方も多いかもしれませんが、そのあたりの真相にもグッと迫っていきます!
まず、ハワイ州旗の基礎知識から。この旗は元々、ハワイ王国の国旗を、州旗としてそのまま引き継いだものです。作られたのは、カメハメハ大王の治世だった1816年。そのデザインは、実際にイギリスのユニオンジャックとアメリカの星条旗をミックスして考案されています。その裏にあるのは、2つの大国と良好関係を保っていこうという、カメハメハ大王の一流の政治感覚でした。
Photo courtesy of Hawaii Tourism Authority(HTA)/Tor Johnson
当時はまだ、国旗という概念を持たなかったハワイ。ですがカメハメハは18世紀末から、イギリス人のバンクーバー船長から友好関係の証しとして贈られたイギリス国旗を、港や住居に掲げていたといわれます。
バンクーバー船長はハワイを3度訪れており、カメハメハと近しい関係にあった人物。バンクーバー船長を通じてカメハメハはイギリス国王、ジョージ3世に書簡を送り、同盟関係を結んでいました。なので港などにイギリスの国旗を掲げ、同盟関係を示すことで、他国の干渉を防ぐ意図もカメハメハにはあったようです。
イギリスとアメリカ双方に
配慮してデザインが完成こうして20年近くもイギリスの国旗がハワイにはためいていたのですが、1812年に米英戦争が勃発すると事情が一変します。アメリカとの貿易も重視していたカメハメハは、2人のイギリス人顧問(アレキサンダー・アダムス船長&ジョージ・ベックリー船長)と相談。その結果、2人が考案したのが、アメリカ国旗の星の部分にイギリス国旗をあしらった新国旗でした。
ハワイ島ハヴィのカメハメハ大王像&州旗
ただアメリカの国旗のストライプは赤、白の2色ですが、ハワイ王国の国旗はイギリス国旗から青も加えて3色に。その数は、ハワイ主要8島(オアフ島、カウアイ島、ハワイ島、マウイ島、ラナイ島、モロカイ島、カホオラヴェ島、ニイハウ島)を表す、8本に整えられています。
こうして新たな国旗が作られた背景には、もう1つ、外国との交易が盛んになりつつあった当時、独立国家としての旗印が必要になったという事情もあったようです。実際、1817年、新国旗はカメハメハが中国に送った貿易船に掲げられ、国際デビューしています。
ハワイ王国7代目のカラカウア王のルアウ(宴会)にも国旗が掲げられている
(Photo Courtesy of Hawaii State Archives)それはハワイの白檀を中国に輸出するための航海だったのですが、貿易船の船長を務めたのが、国旗の考案者の1人だったアダムス船長。イギリスとアメリカ双方の旗を彷彿とさせるハワイ王国の国旗は、きっと中国の海域でも大きな敬意をもって迎えられたことでしょう。
ハワイアンが州旗に抱く
複雑な想いとは?その国旗が今ではハワイ州旗としてハワイ中にはためいているわけなのですが、実はハワイ州旗は、ハワイの人々にとってある意味、センチメンタルなものでもあります。というのもこの旗を、白人勢力によって倒されたハワイ王国の忘れ形見と捉える人も多いからです。そんな理由から、王国が崩壊した1月17日には、人々がこの旗を携えて王国の宮殿だったイオラニ宮殿に大集結します。
…また近年、この旗を「ハワイの危機やハワイアンの悲しみ」の表現として、逆さに掲げる人が増えてきました。ですが、それを厭うハワイアンもたくさんいるのを知っておきたいものです。旗を逆さに掲げるのは、ハワイ王国&ハワイ州の尊厳を損なう愚行と考える人も多いのです。さまざまな意見がありますが、少なくとも外国人である私たちが旗を逆さに扱うのは、タブーと考えるのが賢明でしょう。
なお余談ですが、ハワイでは、この国旗&州旗をモチーフにしたアクセサリーやウエアが、往年の人気アイテムになっています。ハワイ愛に燃える方々は、次回のハワイでぜひ探してみてくださいね。
さて最後にお知らせを1つ。前回のコラムでふれた、ハワイ文化をスマートフォンでサッと学べる新アプリ「フラアップス」が、いよいよ公開されました! 主催は、私の故郷の横浜や名古屋、ハワイでさまざまなフラ関連イベントを開催してきた、カフラホア事務局。私は神話や歴史を担当させていただき、すでに神々の紹介、王族の紹介記事がUPされております。
今後も少しづつ、ディープな歴史コラムや神話など書いていきますので、フラダンサーはもちろんハワイ好き、神話好き、歴史好きの皆さま、以下のリンクからぜひご覧くださいね。今なら1週間、無料で購読できるキャンペーンを実施中です!
森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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