よしみだいすけさんが、メレを旅するハワイをテーマにしたコラム
文筆家、フラナビゲーターであるよしみだいすけさんが、メレを旅するハワイをテーマにしたコラム。今回はオアフ島のカピオラニ・パークについてご紹介。
公開日:2024.02.06
メレ(うた)を旅するハワイ
第七十一回:「メレを旅するハワイ〜カピオラニ・パーク」
Aloha from Mānoa!
ハワイ旅行を心待ちにしているフラダンサーに提案します。
次のハワイではメレ旅に出かけよう!「メレ旅」とは、メレ(フラソング)に歌われた景色を探す旅です。
メレには、ハワイの人が愛するいろいろな土地のことが歌われています。それぞれの島にちらばるそんな場所を訪れる「メレ旅」が、フラダンサーのハワイ旅行をより有意義なものにしてくれます。今回は、オアフ島ワイキキのメレ旅です。
フラダンサーのあなたに質問です。
「メレに歌われるワイキキの地名を3つ挙げよ」と問われたら何が浮かびますか?まずは「ワイキキ」ですよね。「ワイキキ」が歌われるメレについては以前こちらの記事で紹介しました。
「カイマナ・ヒラ」もありますね。「カイマナ・ヒラ」が歌われるメレについてはこちらの記事で紹介しました。
今回紹介する地名は、このメレのタイトルになっている場所です。
Kapiʻolani Pāka
Kaulana ka inoa ʻo Kapiʻolani Pāka
Ia wahi hoʻoluana a ka lehulehu
(John K. Almeida)
有名です、カピオラニ公園の名前
くつろぎの場所、人々にとっての
Kapiʻolani Pāka とはハワイ語でカピオラニ公園のことです。ワイキキに滞在したことがあるあなたなら、きっと訪れていますよね。
広々とした芝生が広がり、ダイアモンドヘッドの絶景が見える気持ち良い場所です。公園の名前の由来は、ハワイ王国7代国王カラカウアの妻カピオラニ王妃で、公園の一角に王妃の銅像もあります。
カピオラニ公園が完成したのは1877年、カラカウア王の時代。富裕層が楽しむ競馬のレーストラックを有する公園として完成しました。競馬場があるカピオラニ公園の光景を歌うのが、あの有名なハワイアン・ソング「カイマナ・ヒラ」です。
Kaimana Hila
I waho mākou i Kapiʻolani Pāka
A ʻike i ka nani o lina poepoe
Lina poepoe, hoʻoluhi kino
(Charles E. King)私たちは出かけた、カピオラニ公園へ
そして見た、競馬場の美しさを
競馬場、体を疲れさせるもの「カイマナ・ヒラ」の曲が書かれたのは1916年とされています。
実はそのころにはすでに競馬場はなかった、ということを今日この原稿を書くためにリサーチしていて発見しました。つまりこの歌は、かつての競馬場があった光景を懐かしんで書かれた、ということのようです。
そもそもなぜあの場所に競馬場がつくられたのか?
当時ハワイの貴族階級や西洋からの移住者富裕層の間で競馬が流行していたことがひとつ、もうひとつはその土地環境でした。
ホノルルの他の場所にあった競馬場では、雨が降るとぬかるみになり具合が悪かった。当時のホノルル・ワイキキはマノアの谷から流れてくる豊富な水のため湿地帯だったのです。
地面が乾いていて雨が降らない場所、として理想的だったのがワイキキのはずれに位置するダイアモンドヘッドの麓のエリアでした。ワイキキの中心地よりも少し地面が高いのと、雨がほとんど降らない乾燥地帯なのは現在も変わらず。競馬場に好都合だったのですね。
ハワイ王国時代の優雅な遊び場だったその競馬場も、ハワイ王国終焉となる1890年代に野球場に姿を変えた後、ホノルル・クリケット・クラブのグラウンドとして利用され、1913年にホノルル市の管理下で公共の広場として市民に開放されたのでした。
当時のカピオラニ公園のはずれには海へ流れ込む小川がありました。位置的には公園のワイキキ側入口あたり、現在のホノルル動物園あたりです。この小川には小さな島がありました。その島のことを歌ったのがこのメレです。
Makee ʻAilana
Makee ʻAilana ke aloha lā
ʻĀina i ka ehuehu o ke kai
(James K. Iʻi)マキー島、愛するもの
海の飛沫に包まれた地
このメレから、カピオラニ公園の小川周辺は恋人たちの散歩コースとして愛されていたことがうかがえます。その小川もマキー島も1920年代にはこの世から消えてしまいました。
何があったのか?
アラワイ運河がつくられたのです。運河のために掘り出された泥はどこに集められたのか?
カピオラニ公園でした。
流れていた川もマキー島も積まれた泥で埋められてしまったのです。ワイキキは湿地帯ではなくなり、ホテルが立ち並ぶ観光地へと変貌しました。アラワイ運河建設の残骸に埋もれたカピオラニ公園は何年も放置された後、1950年代に再開発され、現在のかたちになりました。
次にワイキキを訪れるときには、カピオラニ公園でのんびりと風に吹かれながら、今回紹介したメレを聴いてかつての光景を想像してみてくださいね。
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ハワイからのライブ配信もお楽しみに。
よしみだいすけ
Daisuke Yoshimi
文筆家、フラナビゲーター
ハワイ州観光局アロハプログラム講師、フラやハワイ音楽に傾倒するハワイ・スペシャリストとして、ハワイを拠点に執筆・講演活動を行う。●著書
たくさんのメレから集めた言葉たち(1〜4)
メレ旅(上下巻)
Live Aloha アロハに生きるハワイアンの教え
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