シーライフパーク近くの神話スポット、カウポビーチ
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第39回。オアフ島東側、シーライフパークの近くにあるカウポビーチのお話をお届けします。
公開日:2024.05.30
「鮫の神の祭壇」は、
実際に鮫の出没地だった?Aloha! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム、今回は少し遠出して、オアフ島東海岸の知る人ぞ知るビーチ、カウポビーチをご紹介しましょう。「カウポビーチ? 聞いたことがない」という人が多いかもしれませんが、海洋施設「シーライフパーク」のごくごく近く。またインスタスポットとして人気のマカイ・リサーチピア手前のビーチといえば、ロケーションがなんとなく想像できるでしょうか。そういった意味で、意外に馴染みある場所といえそうです。
カウポビーチ周辺は、実は前回紹介したタンタラスの丘と同じく、いくつもの神話の舞台が望める絶景の地。私もこのビーチを初めて訪れた際、「え! あの岬も半島も山もこのビーチから見えるの!?」と気づいて絶句しました。ハワイでもこれほど複数の神話スポットが眺望できるスポットは、そうあるものではありません。よい意味で衝撃を受けましたので、今回はこちらの神話スポットを紹介していきましょう。
まずカウポビーチでぜひ見たい神話スポットの筆頭が、ビーチ近くの浅瀬に横たわる巨岩「ポハク・パアキキ」。言い伝えによれば古来、鮫の神への祭壇として使われていた聖なる岩だそうです。その昔、ビーチ近くに住んでいた老農夫が毎日、アヴァ酒を岩に供えていたとか。するとどこからともなく大鮫が現れ、供物を飲み干していくのが常でした。
ポハク・パアキキ。背後にはマカイ・リサーチピアが見える
・実は大鮫は、鮫の神カモホアリイの化身。近隣に住む嫌らしい男はそうとも知らず、老農夫にただ意地悪をするため、鮫を釣っては殺すという愚行を繰り返していました。鮫の死骸を岩のところで海に捨てるという嫌がらせを繰り返したので、ついに大鮫を激怒させてしまったのです。ある日、男を食い殺した大鮫でしたが、男の身体のあまりの悪臭に辟易。それに懲りた大鮫が「自分含め、この海の鮫は二度と人を食べまい」と誓ったので、それ以来この海では鮫の襲撃事故が起こらなくなった…ということです。
ポハク・パアキキは1m強の大きな岩なので、干潮時にも満潮時にも、ビーチ近くの浅瀬に顔を出しています。今回の訪問時にはかなり潮が引いていたため、岩の底近くまでが見えそうなほどでした。以前来た際にはかなり満潮でしたが、それでも三角形の岩の先が海から突き出ていたので、岩を見つけるのは容易です。
ポハク・パアキキ ※「ハワイカルチャーさんぽ」P144に掲載
・ちなみに前回、満潮時に岩の写真を撮っていた時のこと。岩のすぐ近くで釣りをしていた地元の人が、面白い事実を教えてくれました。昔この岩は平らだったのが、ある時岩の片側が崩れ、傾いてしまったとか。つまり昔から三角の先端が海に出ていたわけではなく、元々は本当に祭壇状というかテーブルのような形だったのですね。なぜこの祭壇うんぬん…の話が残るのか、深く納得できました。
…しかもその日、実際に岩の近くに鮫が出没したと聞いてゾ~ッ。「これから泳ぐつもりなの? 今日は泳がない方がいい。さっき僕の釣竿のルアーを小さな鮫が追い回していたからね」と男性。なんと! ビーチに近い浅瀬なのに鮫がいたというのです。今はもう岩にアヴァ酒を捧げる人はいませんが、岩の周辺は今なお鮫の出没地点のよう。逆に考えれば、そのため鮫の神にまつわる神話が生まれたのかもしれませんね。
ハワイアン発祥の地や
巨人伝説の残る山も一望のもとさてこのカウポビーチは湾曲した細長いビーチなのですが、ビーチを歩いていると、ほかにいくつもの神話スポットが目に入ってきます。まずビーチのやや左手の遠方には、カネオヘ湾に延びるモカプ半島が(写真はビーチの駐車場近くからの眺め)。こちらはハワイの創世記の舞台でもある、メジャーな神話スポット。四大神が半島の赤土でこの世初の人間を創ったという、いわばハワイアン民族の発祥地です(詳しくは第15回「オアフ島カネオヘ湾周辺の神話&伝説」を参照ください)。手前にもう一つの島が重なってわかりづらいですが、島全体がカメの形に似ているので、タートルアイランドとも呼ばれます(実際には半島です)。
モカプ半島 ※「ハワイカルチャーさんぽ」P156に掲載
そしてそのままマカイ・リサーチピア寄りに歩いていくと、今度は巨人伝説の残る山が。マカイ・リサーチピアの建物の左手後方に、頂上がM字型になった山があるのがわかりますか? 手前の山脈に隠れてしまっていますが、これはカイルアにあるオロマナ山。昔、カイルアからクアロアを陣地にしていた巨人が英雄に真っ二つにされ、下半身が山になった…との伝説が残ります。
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オロマナ山 ※「ハワイカルチャーさんぽ」P178に掲載
・次に、ビーチ真正面に視線を移してみましょう。1kmほど先の沖合にはマナナアイランドが浮かんでいます。島全体がウサギの横顔に似ているため、通称はラビットアイランド。この島に人が定住した形跡はありませんが、魚の神のための祭壇や、埋葬場が見つかっています。またユニークな歴史の残る島でもあり、19世紀の後半には実際に食用のウサギが飼育されていました。今はもうウサギの姿はなく、ハワイ州の海鳥保護区になっています。
マナナアイランド ※「ハワイカルチャーさんぽ」P142に掲載
・最後のスポットは、マカプウ岬。今度は駐車場近くから(海に向かって)右手を眺めると、マカプウ岬が見えます。岬の中腹にあるのが、マカプウ灯台。そもそも岬がマカプウと呼ばれるのは、岬周辺に女神マカプウが住んでいたため。マカプウとはハワイ語で「飛び出た目」との意味があり、女神は頭に8つの飛び出た目を持っていたと言われます。マカプウ灯台は海から120mの高さに建っていますが、その崖下にかつて、女神の石像が立っていたということです(今は石像の行方は不明)。
マカプウ岬 ※「ハワイカルチャーさんぽ」P140コラムに掲載
・以上のように、ポハク・パアキキが間近に見られるほか、いくつもの神話スポットが望めるカウポビーチ。それこそあまり知られていないビーチですが、私のなかではオアフ島指折りの神話舞台のビューポイントがここ。岩に囲まれたプール状の潮だまりがいくつもあるため、週末には家族連れで賑わっていますので、シーライフパークやマカイ・リサーチピアの訪問に合わせてぜひ足を伸ばしてみてくださいね。シーライフパーク入口の斜め前にあるマカプウビーチパーク入口
を過ぎ、そのままカラニアナオレハイウェイ沿いをマカイ・ リサーチピア方面に進むとすぐに、カウポビーチの駐車場への入口があります。またマカイ・リサーチピアから、ビーチ沿いに歩くことも可能です。
阪急うめだ本店のハワイフェアにて
トークショー&ワークショップ開催!最後に、嬉しいお知らせが一つ。7月中旬に大阪の阪急うめだ本店で開催されるハワイフェア2024で、トークショー&ワークショップをすることになりました。登壇日は7月11日(木)~14日(日)。実は今回が初めての大阪上陸なので、ワクワクしています!
詳しい時間や申し込み方法など詳細は現在調整中なので、6月後半に公開される同ハワイフェア2024の公式サイトでご確認くださいね。それまでは百貨店や各所にお問い合わせいただいても対応できない状況ですので、どうぞご協力をお願いします(ペコリ!)。
なおこのコラムで触れた各神話・歴史は最新刊「史跡と神話の舞台をホロホロ! ハワイカルチャーさんぽ」(地球の歩き方シリーズ)でも取り上げています。ぜひお手に取ってみてくださいね。以下の神話関連書籍2冊も、どうぞよろしくお願いいたします。
\ 最新刊「ハワイカルチャーさんぽ」は3月に発売されたばかり。 /
「やさしくひも解くハワイ神話」は現在4刷目、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」(現在、アロハストリート横浜店でも好評発売中!)は2刷目が出来あがりました!
森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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