メレ（うた）を旅するハワイ
第七十九回：「メレを旅するハワイ～マウイ島ウルパラクア」

Aloha from Mānoa!
ハワイ旅行を心待ちにしているフラダンサーに提案します。
次のハワイではメレ旅に出かけよう！

「メレ旅」とは、メレ（フラソング）に歌われた景色を探す旅です。
メレには、ハワイの人が愛するいろいろな土地のことが歌われています。それぞれの島にちらばるそんな場所を訪れる「メレ旅」が、フラダンサーのハワイ旅行をより有意義なものにしてくれます。

今回はマウイ島のカウボーイタウン、ウルパラクアへのメレ旅です。

上の動画はマウイ島のフラ・グループ、Hālau Kekuaokalāʻauʻalaʻiliahiの男性チームがメリー・モナーク2023で踊ったときのもの。

メレの舞台はウルパラクア。マウイ島ハレアカラ山の中腹にある広大な牧場で有名な土地。

こんなふうに歌われる場所です。

Kaulana mai nei
Aʻo ʻUlupalakua
He ʻīnikiniki ahiahi
Ka home aʻo paniolo
(ʻUlupalakua by John Piʻilani Watkins)

名高いのは
ウルパラクア
夜の肌寒さ
カウボーイの地

ウルパラクアってどんな場所？

ウルパラクアが牧場として有名になったのは19世紀後半。
やがてそこで働くハワイアン・カウボーイたちのことが歌い踊られるようになりました。投げ縄を手に馬に乗って駆け巡り、仕事を終えるとギターを奏でる彼らはみんなの憧れ。

カウボーイの技術と文化をハワイに伝えたのは、19世紀前半にメキシコからやってきたカウボーイたちでした。

カリフォルニアのAcademy of Hawaiian Artsが2024年に踊ったマウイ・ソング「Moku O Ka Rose」にもウルパラクアが描かれています。

Makena hoʻi ke kai i Mākena
Kaulana mai nei o ʻUlupalakua ʻeā
Ka home o nā paniolo
(Moku O Ka Rose by Kuana Torres Kahele)

穏やかだねマケナの海
名高いのはウルパラクア
カウボーイたちの地

「バラの島」という意味のタイトルがつけられたこのメレは、島の各地の名称とともにマウイをたたえます。

マウイ島のレイといえばピンクのバラですが、どうしてマウイはバラなのか？

他の島々のレイ・フラワーはみんなハワイ在来種の花なのに、マウイだけ外来種のバラなのです。この素朴な疑問の答えがウルパラクアの歴史を調べていて見つかりました。

牧場とワイナリーの地として有名な現在のウルパラクア、じつはこの広大な土地はかつてバラ農園だったのです！それは1840年代、ラハイナにハワイ王国の首都が置かれていたころのこと。

そのころラハイナの港に西洋人がたくさんやってきました。彼らが持ち込んだもののひとつがバラでした。ラハイナの家の庭で咲くピンクのバラが町の話題になったりしたそうです。

そんなある日、マウイ島に住み着いて島の名士になった西洋人の船長が、ハレアカラ中腹に広大な土地を購入します。そうしてできたのがバラ農園でした。このバラ農園が、後にサトウキビ農場と牧場に姿を変えることになったのだそうです。

クムフラ＆シンガー、故ジョニー・ラム・ホーの曲「Ka Laʻi O Kula」にもウルパラクアが歌われます。

Ma lalo iho lā ʻo ʻUlupalakua
Me ka ʻawapuhi
Ka home o ka paniolo holo lio
Kuehu aku i ka lepo
(Ka Laʻi O Kula by Johnny Lum Ho)

ウルパラクアのしもて
そこにはジンジャー
馬乗りカウボーイの故郷
上がる土煙

ちなみにこのメレのなかにはもう一つのマウイ名物、甘くて美味しいマウイ・オニオンも歌われています。

今回はハワイアン・カウボーイの地としてメレに歌われるマウイ島ウルパラクアを紹介しました。